業界の新聞を読んでいると、「ガソリン市況問題」とか「適正価格で販売を」という言葉が躍っています。油業報知新聞にも似たような記事が出ていますが…。
こういう「情報」は何十年も前から全く変わらず維持されています。私はいたずら好きなので、仮に編集者になったら1980年頃の記事をそのまま掲載してシレっとしますね。案外、誰も違和感を持たないかもしれません。
過去に何度も書きましたが、自由化以前はオイルショック時の「標準価格制度」がそのまま維持されて、ガソリン高・中間品安という異常な価格体系となっていました。
その時代は元売がガソリンでしか儲けられないために、ヒト・モノ・カネをガソリン販売部門に傾斜していました。ガソリンの利益が分厚いために、それが分かっている特約店は市況維持を図りながら元売利益から「事後調整」を引き出す手練手管を駆使していました。
1996年の自由化は、標準価格体系との訣別でありガソリンは儲からない商品に転じた局面でした。
正直に言えば、当時、私は自由化の本質を理解せずセルフやローコスト化で独立系が圧倒的優位に立つと信じておりました。私も「ガソリン脳炎」に侵されていました。
ガソリンに対する見方が変わったのは2000年代に入って数年後のことでした。
これも以前に書きましたが、ローコスト燃料特化型セルフで量販に走っていたCOC会員の会社が、SS投資資金を農業事業に転じました。ちょうど国内ガソリン需要がピークアウトした頃でした。
もう1つは、本格的なオートケアセンターを隣接する経営者が「車ビジネスに比べてガソリンは面白くないな」という一言でした。車検、車販、板金、保険などカウンター商談で顧客と接しながらプロセスで詰めていく「自力本願の商売」に対して、近隣SSが元売から販促費を貰ってティッシュ配りするだけで客が移動する「他力本願」のガソリンビジネスモデルへの本音でした。
さらに、COC有志で米国に行った時に、ちょうど米国セブン‐イレブンが上場を廃止して日本本部の意向で戦略転換するさなかでした。PB商品を投入して、日本流の単品管理を実践する直営店をたまたま訪れました。彼らはCVSで利益を稼ぐという考え方を徹底しており、ガソリンはセルフで放っておいても売れる商品という位置づけでした。
米国もかつてはガソリンで集客しながらタイヤ・バッテリー・オイルを店頭セールスするスタイルでしたが、市場が飽和状態になったうえに、新業態としてクイックルブやカーウォッシュ専門店の台頭から業界全体でCVSに舵を切りました。
改めて96年の自由化の意味を考えれば、ガソリンは儲からなくなる、だからSS業界はなんらかの利益業態に転換すべきということでした。こういうことは私ごときが言う前に、四半世紀前の「流通効率化ビジョン研究会中間報告」がしっかりと謳っています。
①サービス充実型(自動車関連)
②量販型
③多角経営型(異業種コラボ)
④早期撤退型
残念ながら当時の業界は「早期撤退」という言霊にこだわり、そして四半世紀たってもなおコモディティに「適正利潤」という不可解な言葉を弄しています。他力(市況)本願のガソリンにこだわる限り、働く人たちには自由化以前と全く変わらない「目標管理」と「使い捨て」の日々が続くだけでしょう。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局