COCと独立経営<834>FCVや合成燃料はあさっての話です – 関 匤

3月8日付の油業報知新聞九州版に「福岡県1月末現在EV8108台、FCV260台」という記事がありました。
同期の福岡県の乗用車登録台数は116万台です。EVは0.7%、FCVは「0.02%」です。EVは1000台中7台です。「大きなショッピングセンター駐車場でたまに見るね」の存在感です。

しかし、FCVは1万台に2台です。

2000年代に入って「水素」を大声で叫ぶ人たちが多数現れて、2014年に満を持したかのようにトヨタがFCVミライをリリースしました。
当時、COCの経営者たちは水素化社会到来かとSSビジネスに危機感を抱きました。自動車関連のコンベンションに出かけて、トヨタに近くてエネルギーとFCVに詳しいアナリストにお話もしていただきました。
ふつうのSS施設でも中小企業は大きな固定費を抱え込んでいるのに、水素になれば数倍の投資です。もはや中小企業経営に入り込む余地はありません。補助金ありきで成立する水素ステーションです。

充填料金も補助金なしでは成り立ちません。安全確保のためにスタッフが充填します。セルフに便利さを覚えた消費者層が、いくら脱炭素とはいえ、昔のサービスに戻りますか? しかも高い車に補助金なければとんでもなく高い燃料入れて。
水素を先導している人たちに消費者目線と原理原則のエネルギー思考が欠如しているのでしょうね。賑々しい発売からまる9年経ちましたが、政令指定都市がある福岡県で260台という絶滅危惧種並みの登録台数でしかありません。

先日のCOC新年研修会で自動車燃料費の試算が紹介されました。

HVのヤリスとEVのリーフで同じ距離を走行して、燃料費でリーフはヤリスの4割です。EVには補助金でいろいろ批判も言えますが、2022年暦年でEV新車販売台数が前年比2.7倍になったのは、やはり経済性が大きいのかなと思います。

同じ比較をEVとFCVで試算すると、FCVはヤリスの2.5倍の燃料費です。リーフは5.9倍になります。燃えてなくなる燃料にこんな消費を望む人はいるでしょうか。官公庁が環境パフォーマンスで購入する(どうせ人の金)モニュメントが実態でしょう。
しかもFCV給電の際に消費する電力35kWhをEVに使えば227kmも走れるそうです。

そして、「合成燃料」の登場です。
現時点では、ヤリスの4.2倍、リーフに対しては10倍です。さすがにハンデが必要なので、合成燃料の生産量が増えるであろう(希望的観測)2045年予想値でEVの3倍という数字が出ました。
私は新技術を否定しませんが、SS小売業の目線で見れば、水素も合成燃料も「あさっての燃料」です。新燃料のスタートアップ企業に投資するならともかく、SS経営者には関心の埒外の筈です。

そんな話に騒ぐよりも、“目の上の蠅”を叩くことが先決ではないでしょうか。

1つは、売り上げを依存しているガソリンの構造的な減販=客数の減少。2つめは後継者問題。3つめは人材不足=社員がいつかない。企業存続にとってもの凄く深刻な問題です。
客数を増やすにはSSを魅力的な業態に変える必要があります。そのためには優秀なスタッフを育てなければなりません。スタッフが育つには、能力なりにきちんとした報酬が不可欠です。後継社長に据える腹も必要でしょう。

目の前に難問があるのに、未来を空想する暇がSS経営者にはあるのかな、と考えてしまいます。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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