石油連盟の統計で国内販売数量が出ています。今年2月までですが、ガソリン販売量を年度で合計してみたら「2021年度比100.8%」となっています。前年超えです。
ただし、「20年度比▲1.3%」であり需要回復だ!ともろ手を挙げて喜ぶわけにはいきません。しかも、コロナ前の19年度比では「▲9.4%」です。
これは数量で424万9000㎘です。この数字は石連統計上の東京都の販売量に匹敵します。福岡県の2倍です。1SS月間で12㎘減少したことになります。
構造的な需要減少に加えて、コロナ禍でこれだけの需要=客数の減少をもたらしています。(グラフ参照)
2022年度が前年度比で増えているというのは、間違いなくぬか喜びにすぎません。
本来はウクライナ戦争のあおりで200円に吹き上がるガソリン価格が、最大37円に及んだ補助金による“需要延命策”によることは明らかです。2022年度の前年比増は、国費が下支えした結果と言って過言ではありません。
石油村の自助努力とは言えません。だって、競争を拒否しているわけですし、COCの独立系SSもおすそ分けにあずかっているわけです。本当に恵まれた業界といえます。
コロナ禍で客数ゼロになって廃業したお店が他業界ではいっぱいありましたから。
しかし、SSが一蓮托生とする自動車業界では、コロナ禍で新たな「兆候」が見えています。EV=電気自動車です。
自動車関係諸団体の統計資料によると、EVの販売台数は着実に増加しています。(グラフ参照)
コロナ直撃の2020年は落ちましたが、右肩上がりの傾向にあります。
日産の軽EV・サクラの効果もありますが、22年度はコロナ前の19年度に比べてほとんど倍増となっています。
気になって保有台数を調べてみました。ここで私が言うEVとはハイブリッド(HV)やPHVではない、純粋にバッテリーで走行する自動車です。22年3月末でEV保有台数は13万8000台強です。大した数字ではありません。
しかし、今や日本の道路の主役となって走るHVですが、2004年度で13万2000台の登録台数でした。EVはその時点に並んでいるわけです。
したがって今後のEVの伸びしろがHVと同様のベクトルを描くのか、あるいは中折れするのか…でも、HVと同じ可能性を視野に入れるのが経営者の視点でしょう。
先述のように、EV販売台数が増加しているのは何故なのか。コロナ禍によるサプライチェーン混乱による新車玉不足でやむなくEVを買ったのか、乗りたくて買ったのかは分かりませんが、「2004年のプリウス」を意識しておく必要があります。
むしろ、EV社会を前提として中長期的に物事を考えた方が面白いかもしれません。
EVはパソコンやスマホに車輪が付いた自動車です。GPSやAIによるビッグデータ解析を行うプラットフォームが必ず現れます。
それは最近評判が悪いですが、GAFA、あるいはMATANAといった国境を超えたプラットフォーム勢力でしょう。EVがHV並みに走りだしたら、系列とか独立系とか全く無意味になります。
プラットフォーム企業を活用しながら、ひたすら顧客ニーズを追いかけることになるでしょう。
もう変化は始まっています。単年度でガソリンが増えたといってもコロナ禍前比で大幅減です。そして車から移動体へと消費者の意識が流動化していると思います。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局