COCと独立経営<844>「次世代経営者の躍進」 – 関 匤

長らくSS業界を眺めていて、これはSS企業というよりも中小企業に共通なのかもしれませんが、事業継承は難しいなと実感します。
ざっくりと8割の後継者は先代を越えられないか、そもそも事業を継がずに別の道を歩んでいるのではないでしょうか。往々にして先代は誇るべき学歴を持たず、事業を始めた頃にお金で苦労しているために、子息には欲しいものを買い与え、塾や家庭教師を付けて有名校に進学させる、というのが親子のステレオタイプでしょう。

育った環境が違いますから、交友関係も違ったものとなります。同じ遺伝子は持ってはいても、世の中はお互いに全く違った光景に見えることでしょう。
私の好きな映画「スーパーの女」で、2代目のダメ経営者役の津川雅彦さんが思わずこんな言葉を吐くシーンがあります。
「僕はねスーパーなんか継ぐ気はなかったんだ!」。
これは多くの次世代経営者の本音かもしれません。

前置きが長くなりました。さる5月18日に「COCビジネス研究会」を開催しました。研究会の名の通り、SSビジネスでテーマを絞り込んで講師を呼び、経営者に実務をお話しいただきます。

最近は車販が多くなっています。今回もそうでしたが、2人の経営者にお話しいただいたら奇しくも「事業継承論」のような展開となりました。1人は継承したAさん、もう1人は次世代に継承を予定するBさんです。BさんはCOC会員ではありませんが全国的に有名な方であり、ものすごい勢いで車販を伸ばされており無理をお願いしてお招きしました。お2人とも話はものすごく面白くて、大いに勉強になりました。

Aさんは33歳です。25歳の頃に商社子会社SSで実務修業してから家業に入りました。COC研修会にも顔見せに参加していましたが、暫く顔を見ない状態になりました。

コロナ禍の前年、COCで車販実績の高い経営者が有名なスズキ自動車の副代理店大会に参加したら、そこにAさんがいたので驚愕しました。「なんでここにいるの?」と聞いてしまいました。
というのも、Aさんの父親は典型的な“ガソリンおやじ”であり、Aさんはその下でセルフSSの価格をいじくりながらオイル交換ぐらいの油外はやっていると思われていたからです。

事業継承で難所となるのは、次世代が先代の経営路線を転換しようとすることです。長年の経験を基に先代は出来ない理由で集中砲火を浴びせるはずです。とりわけAさんの場合は、ローコスト燃料油主体経営から新車を仕入れて資産を増やす投資によるハイリターンを目指すものでした。
実際にAさんは「激しく対立してきた」とお話ししました。店頭に立ってトップセールスで実績を作りながら、スタッフの意識を車主体に向かわせ、頭が変わらない人が辞めることもありました。積極的に車販の先駆者やコンサルタントにお金を払って勉強しています。投資(コスト)から高収益を導き出すことで、先代も徐々に理解を示すようになったそうです。

その結果、スズキ副代理店昇格と同時期に社長に就任しました。先代は「もう勝手にやってくれ」と認めることになりました。車関連の繁盛店作りを目指しており、隣地に指定整備工場をオープンし、今夏にはコーティング専用ブースも出来上がります。SSを1カ所売却して投資資金としながら戦力を1店舗に集中しました。お店にお邪魔したが、見事にスタッフを束ねていました。

一方のBさんは、子息を「旅」に出しています。名うての油外繁盛店へ丁稚奉公に出して、さらに別の会社に行かせています。Bさんの場合、経験から単なる禅譲では事業継承できないことを分かっています。AさんといいBさんの子息といい頼もしい次世代経営者が育っています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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