6月7日付油業報知新聞で、西尾直毅さんが私と和田さんの投稿記事を引用して、結果追求とはいえ違法行為は絶対に許されないと書かれていました。
私はかなりシャイな性格なので実名を出されるのは苦手ですが、西尾さんの主張は当たり前のことながら現実社会、とりわけ”村社会”の石油業界では違法ではないけれどこれでいいのかな-を感じることが少なくありません。
前にも書きましたが、私の大好きな映画は故・伊丹十三監督の「スーパーの女」です。パート主婦役の宮本信子さんが、ダメスーパーを少しずつ改善しながら従業員たちと繁盛店にする話です。35年前の映画ですが、商品偽装、売れ残り鮮魚のリパックや総菜の揚げなおし、挙句に在庫の転売行為などが描かれます。しかし幹部たちは「商売と屏風は曲がらな立たない」と平然と口にする人たちです。
「正直屋」の名の通り正直に商品とサービスを見直しながら、不正を商慣習と勘違いする人たちを淘汰する物語です。なぜか、この映画を見た時に石油業界がオーバーラップしました。
スーパーがらみで長浜淳之介さんという著名な流通ライターがこんな記事を書いています。「コストコさん、うちにも来て! 激化する誘致合戦」(ITメディア)。
全国の自治体がコストコ誘致に動いているそうです。コストコは2030年までに店舗数を現在の32店舗から60店舗まで伸ばすと表明しています。誘致自治体の件数に裏付けられた出店計画かもしれません。近々、パナソニック工場跡に大阪門真店がオープンします。大企業が撤退した後に高い集客力を持つコストコが来るので門真市は嬉しい限りでしょう。
コロナ渦中に自動車で買い物に出る人が増えて、1回で1週間分を購入できるコストコが集客力を高めたそうです。
ご存じのようにコストコは非常に広域の集客力を持ちます。愛知県の常滑にオープンした時に、駐車場を見たら「岐阜」や「四日市」など他県ナンバーが少なからずあって、商圏は半径50kmはあるなと実感しました。
この商圏の広さが出店自治体にとって大きな魅力となります。長浜さんの記事に、今年4月にオープンした群馬県明和店が紹介されています。明和町は人口1万人で近隣に館林市、利根川を越えて埼玉県羽生市、行田市などがあり、他市町にある3カ所のイオンモール、ジョイフル本田によって消費を簒奪されていました。また、令和2年3月31日時点の資源エネ庁「市町村別に見るSS過疎の状況」ではSSは1カ所もない「SS過疎地」でした。
そんな町にコストコが出店したことで他市町に流出した消費の流れを逆転し、逆に明和町が簒奪する側に攻守逆転の様相です。
長浜さんの記事に「コストコをきっかけにコストコ周辺に進出を検討する企業からの問い合わせをいただいています」という明和町産業環境課の談話があります。コストコの集客で、同町の観光インフラの桜並木やシクラメン通りを訪れる人も増えることでしょう。
以前の原稿で同じ群馬県の道の駅・川場について書きました。地場人口3000人の町ながら道の駅が年間200万人の集客軸になっています。JAのSSが隣接します。
明和町や川場村で補助金を使って無理やり既存業態のSSを出店したところで、来店客数は地場商圏に限定されます。業界協調価格で売れば確実に他市町の有力店に吸い上げられます。自動車が足の地域なので顧客は簡単に市町村を超えてしまいます。
消費者にとって過疎地の店舗は、運営者が石油販売業者である必要はなく、ようは店舗として魅力があれば利用するのです。必要なのは「給油所」ではなく「小売サービス・ステーション」です。自治体が誘致のラブコールを送るコストコがサクサクと過疎化問題なるものを解決しそうです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局