COCと独立経営<557> 系列店の前提条件「同質化」の消滅-関 匤

90年代までの石油業界では、系列内に特約店経営のフルサービスの超量販SSがあって、系列ゴンタの愛称で呼ばれていました。この時代に500㌔㍑前後のガソリン販売量は大変な数字でした。ただし少数でした。

一方、その下に300㌔㍑前後のある程度まとまったSS群があり、100㌔㍑前後に大きな集団が存在する系列内構造でした。超量販SSに元売が支援をしても少数への限定的な対応であって、全体の利益への影響も限定的であったと思います。また、零細店でも転籍とか業転買いが出来たこともあって、言わば微妙なバランスの上に系列店組織が維持されていました。

しかし、96年以降はバランスが変調をきたします。商社とJAの流動化=PB政策にセルフ解禁が引き金となって、系列・非系列にかかわりなく「セルフ量販店」がまとまった母数で登場します。しかも1SS=千㌔㍑前後の欧米級SSも出現して、量販の概念が一変しました。

片や自由化対応が遅れたSSも少なくなく、系列内の数量格差が一気に拡大しました。これは取引条件に直結します。

また、21世紀当初の業転流通拡大と系列店の他社買い増加に対して、元売は自社玉の安定販路として直営SS網を飛躍的に拡大します。これが、系列内数量格差にさらなる拍車を掛けました。非系列ではSS業態店に加えて流通系のSC、HC等の本業での収益軸を確立した新規参入が相次ぎました。

こういう段階を追って見ると、連想するのは家電流通です。

70年代までは町に松下、東芝、日立、三洋などの家電系列店が一店ずつあって、メーカーの名前で電気製品を中心に販売を競っていました。TVCMなどメーカーの宣伝活動と系列店活動が連動していました。

これが80年代になると秋葉原や日本橋に代表される家電量販店が急速に台頭します。大量仕入れ・大量販売は、メーカーにとって魅力的であったはずです。この時点で家電チャネル戦略が系列店と量販店の2系列になります。90年前後になると、量販店を超えた量販店が北関東から出現します。「YKK」と呼ばれた大型店です。それが合従連衡を繰り返すうちに、ヤマダ、ヨドバシ、ビッグなど巨艦店が市場を席巻して、気が付いたら家電系列店は次々と退場していました。

さらにTV通販からウェブへと家電チャネルは競合します。家電巨艦店の店内ではスマホを持つ人が現品を確認した上で、価格の安いアマゾンに発注しています。

家電系列と元売系列に共通する変動要因は「数量格差拡大」です。同質化という前提が崩れて家電系列は存在感を希薄化させました。石油では霞が関で「お勉強会」を楽しんでいます。

SS流通の現状は、家電で言えば巨艦店登場の辺りでしょうか。さらに、自動運転など車のAI化とEVやバイオ燃料の本格拡大は家電流通のウェブ化に匹敵する地殻変動です。
同質化どころか車と燃料も変わろうとしているのです。系列は随所で存在感を失っています。

一方、家電系列店です。とう汰の波の中で、ハード(家電製品)の価格競争を避けて、出張メンテナンスや小物配送など零細でなければ出来ないサービスを磨き上げたお店が存在感を維持しています。彼らの生き方は、石油業界の「お勉強会」よりよほど実効性のある先行モデルです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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