全石連の新聞に全国石油協会の2022年度決算ベースの「SS経営実態調査」の概要が出ていました。
燃料油粗利益に関して、
① レギュラーが前年比1.0円高
② ハイオクが1.1円高
③ 灯油が2.4円高
④ 軽油が2.3円高
利益改善しています。
そして、営業利益ベースの赤字企業は37.1%で前年比0.1%減少。SS数3カ所未満の小規模事業者が赤字増加となったが、4カ所以上の業者は赤字が減少しているそうです。
当たり前というか、粗利が改善すれば、極端に数量減販しなければ5カ所規模の会社では1000万円~2000万円ほどの燃料油営業利益押し上げ効果が得られているのでしょう。小規模店は規模の経済学が働かないので減販で相殺されたということです。
一方需給ですが、石連統計ベースで23年暦年の国内販売実績が出ています。これをコロナ前の2019年暦年と比較した伸び率はこのようになります。
① ガソリン 89.9%
② 灯油 82.9%
③ 軽油 92.4%
④ 燃料油合計 88.8%
単純に考えれば5年でガソリン給油客数が10%減ったということです。需要の減少は構造的な要因があるので、SS敷地への来店客数を増やすには、いつも同じようなことを書きますが、「新たな集客軸」が不可欠となります。
これは難しいテーマです。業界の声の大きい人たちが「ガソリン市場の正常化と経営の安定」と、コモディティの市況改善ばかり啓蒙し続けてきた結果、新たな領域への投資に慎重になっているようです。
自由化以降、車検、車販、レンタカーなどカーケア収益に客単価と利益性の高い分野が出現しました。優秀なSSも数多く出現しています。しかし年間1000万円の営業利益を上げるSSはごく少数でしょう。この水準に到達すれば全石連が口にする「再投資可能」となるのですが。
SSがテーマとすべきは「経営の安定化」といったレベルではなく、「大繁盛店作り」と考えます。知ったような口を叩くわけではなく、自由化前後の時代には大繁盛店を目指す経営者が少なくなかったからです。
COCでは1SSサブ店が、整備市場の規制緩和を捉えて本格的な大型カーケアセンターに投資しました。「この道楽息子は必ず会社を潰す」と盛大に揶揄されましたが、見事に大繁盛店に立ち上げました。残念なことに後継者の出来が良過ぎて家業に関心を持たず、事業を売却することになりましたが。
この繁盛店を作った結果、サブ店SS時代にやきもきしていたガソリン市況や粗利が気にならなくなり、ヒト・モノ・カネをカーケア事業に思い切り傾斜させました。
逆に、巨大なカーケアセンターを持つ異業種の場合、大型セルフSSで新規参入したことで来店客数が劇的に増加して車販・車検台数を押し上げました。
いずれもスタッフへの要求値が大きい半面、会社として後方支援体制に思い切った投資をしています。スタッフを疲弊させる声掛けの銃剣突撃ではなく、売りやすい動きやすい環境と高賃金を目指しています。
3月21日の油業報知新聞にENEOSプラットフォームひたち野うしくSSのオープン記事が出ていました。
敷地1800坪! にドトールキッチン始めコンビニジム、マッサージ、インドアゴルフ、ペットショップ、地場野菜マルシェなど新業態を組み合わせた「次世代実験店舗」です。
中小企業は逆立ちしても出来ない投資ですが、元売は自らの立場で繁盛店を模索しているのでしょう。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局