何度も述べていますが、私はSSを「小売業」と定義しています。役所や大手メディアが言う「給油所」ではありません。
そもそも給油所という言葉は戦前に使われていたものです。旧運輸省統計によると1937年の乗用車登録台数は「6万台」です。この時代の古い写真を見れば、商店の軒下に手動で汲み上げて落差で落とすポータブル計量器が置かれているか、専用施設で割烹着姿の女性が給油するものがあります。現在のEV給電器のような無機質な存在が「給油所」でした。
現在、6200万台の乗用車が走っています。自動車産業が80年間で1000倍に膨張したことになります。となれば、関連産業もすそ野を広げながら膨張します。今、「型式指定」を巡る認証不正問題に大揺れの自動車業界ですが、ネットの「みんかぶ」というサイトで「トヨタ関連上場企業」がリストアップされていて、それが17社もあります。
彼らはメーカーですが、アフターマーケット関連で日経新聞の「自動車小売」で27社の上場企業が並びます。「自動車用品」では23社あります。
SSに近い業態としてカーショップがあります。自動車用品小売業としてスタートしていますが、オートバックスもイエローハットも創業は1975年です。この時期に現在、系列大手と呼ばれる石油特約店はすでに強力な地盤を築き上げていました。
一方、ゼロから始まったカーショップ2社でしたが、バックスは18年後の1993年、イエローは20年後の1995年に株式上場を果たしています。彼らは「小売業」として成長したわけです。
彼らの創業時に、SSは自動車用品小売りのトップチャネルでした。タイヤ、オイル、バッテリーはもちろん芳香剤、ワックス、アクセサリーに、今では無くなりましたがカーステレオと音楽テープでも有力チャネルでした。しかしカーショップ登場と軌を一にするように、SSは市場プレゼンスを後退させていきました。ちなみにバックスでは、FC2社が上場を果たしています。
私は「給油所」なんて古色蒼然とした言葉を使い続けた結果だと思っています。
ひと頃のビッグモーターに代わって、最近のCMで「転職サイト」の元気ぶりが目立ちます。人手不足を背景にして、転職者に対する産業界のニーズが相当に高くなっています。
また某総合商社では、部下から転職者を出さないことが管理職の評価基準に加えられたそうです。人気の大企業でさえ「人の問題」に腐心しているのです。
SSもアルバイト時給が上がって、中には「1500円」という会社もあります。それでも人手不足は深刻です。問題は企業の大小よりも、仕事のやりがいと頑張った結果に対する“ごほうび”の有無ではないでしょうか。
SS業界では「2035年までは確実にガソリンの時代は続く」という安心感が漂っていますが、「給油所業」と言っているようでは35年を待たずして退場の憂き目にあうでしょう。
私が「小売業」というのは、商品やサービスを開発して市場にぶつけて、検証しながら精度を高めることで利益を高める業態です。この過程でスキルとやる気のある社員が評価されて、小さい会社でもロイヤリティを高めて企業成長に向かっていくという会社です。
理想の空論ではなく、先述したカーショップの成長過程はその典型です。山口の商店街でアパレルブランド品を安売りして供給を止められた1用品店が、ユニクロになった例もあります。
給油無人化がすでに実用実験される時代です。そろそろ「給油所」という言葉を“死語”にしませんか? もっとも、少なからずの人たちが「給油所」にこだわっているので、しばらくはまだ続きそうです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局