自動車メーカーの新車認証不正問題です。日本経済新聞6月5日付より(要約)。
「トヨタは、生産中の3車種で歩行者保護試験での虚偽データの提出をしていたことや、過去に生産していた4車種で衝突試験時の試験車両の不正加工などがあったことを明らかにした。
トヨタはグループ内で型式認証を巡る不正が相次いでいた。2022年3月に日野自動車で判明して以降、豊田自動織機やダイハツ工業へ広がっていた。
ダイハツでは23年12月に全車種が出荷停止となる事態となった。試験時の虚偽データの記載や歩行者保護試験の認証不正、衝突試験時の不正加工などが発覚。開発現場での過度な納期の短縮が不正の一因とされた。」
記事はさらに、トヨタは販売車種が多く、国内だけで60車種にのぼる。他社の3~5倍の車種だが、規模拡大とともに現場の負荷も高まったとします。労使交渉でも「短期開発のプレッシャー」がテーマとなっていたそうです。
トヨタにとどまらずホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機まで不正が明らかになりました。
トヨタは不正があった7車種の出荷を6月末まで停止しています。出荷停止車種のうちヤリス、カローラ、シエンタは今年1~5月の国内新車販売でトップ3を占める人気車種です。
車販に取り組むSS経営者にとっては、ガソリンでコストコが出店するよりも、こっちの方が心配じゃないでしょうか。
コロナ禍でサプライチェーンに様々な支障が生じました。原材料の調達と輸送、半導体不足、人件費の高騰と人手不足、増加する自動車需要に対する新車納期遅れ等々により、車両価格の高騰も見られます。
今回の人気車種の出荷停止で、販売車両の高騰と玉不足が起こっているようです。そして新車問題の余波は中古車市場に波及します。下取りが減って中古車相場に影響が出始めています。
オークションで最大のUSSの取引実績を見ていると、コロナ前の成約価格は平均80万円前後でしたが、2021~22年に右肩上がりに高騰して100万円超を続けました。23年に入って90万円前後まで落ち着いていましたが、ダイハツ不正以降100万円台を続け、トヨタ不正発覚の5月は120万円台です。
私はCOCに限らず車販に熱心に取り組むSS事業者を見てきましたが、車販は今後のSSにとって非常に重要な意味を持つと確信しています。
収益性が高いことがありますが、それよりも顧客との関係を強固にすることができます(もちろん真面目に向き合えばですが)。
ガソリンもそうですが従来型SS油外アイテムは刹那的であり、コスト(人件費・販促費)に対してリターンが割に合いません。刹那的とは売って終わりということです。次回給油やオイル交換をどこでやるかは顧客の勝手です。
一方、自動車は刹那的ではなく「期間で付き合える」商材です。買い替えるまで長いレンジで顧客とお付き合いできます。車販を熱心にやっているSSは実感していると思いますが、自動車顧客は「帰巣本能」のように期間中のメンテナンスに来店する傾向があります。保険絡みの相談も発生します。
給油来店が構造的に減少していますが、一方、EVが市場で顕在化するまで10年は要すると言われます。その間に、「給油客」ではなく「車販客」を増やすための投資や活動に傾斜して顧客を車販客で固めておけば、仮にEVに転換しても必ず派生サービスをモノにできるでしょう。車接点の顧客関係です。
多くの企業が、車販に関与していますが、数量主義という“悪癖”でSSの顧客接点を壊さないようにしてほしいものです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局