前にも書きましたが、コストコの近畿5店目の滋賀県東近江店が23日にオープンしました。滋賀県の主婦が投稿する生活情報サイト「シガマンマ」にこんな記載があります。
「コストコの滋賀県初出店とあって、朝から駐車場に入るのも長蛇の列。家族が前日に併設のガソリンスタンドに行っていたのですが、前夜には既に行列ができていました。」
“令和の米騒動”の渦中に白米が豊富に品揃えされているそうです。ガソリンは会員制ながら「157円」と県平均を10数円下回ります。
滋賀東部から尼崎の東西横断、京都・門真・和泉に縦断するネットワークは、近畿の需要地域を包囲する布陣です。月5000を売る店舗もあり畿内市場は変動必至と言えます。
流通業界と言えば大きなニュースが世界を走りました。カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」(Alimentation Couche-Tard=クシュタール)が、「セブン&アイ・ホールディングス」(セブン)に買収提案を仕掛けました。
クシュタール社は日本人に馴染みのない社名ですが、「サークルK」のブランドをご記憶の方は多いでしょう。米国ロードサイドでよく目にします。日本では流通大手ユニーがライセンスを取得して、中京エリアを中心に全国展開して6700店舗の加盟店を擁していました。
2000年前後のコンビニ加盟店トラブルの多発を機に、コンビニ業界の再編が凄まじい勢いで進みます。当時のコンビニ専門誌の統計で150社のコンビニ本部がありましたが、現在では大手3社プラスαまで再編されています。サークルKはサンクスと統合し、さらにファミリーマートに統合されました。日本ではサークルK商標は消滅しました。
米国のサークルKは1951年創業ですが90年代に経営破綻して、2003年にクシュタール社が傘下に収めています。
クシュタール社はカナダで1980年に創業しM&Aで業容を拡大してきました。国際的にコンビニ再編で台風の目のような存在です。日本のローソンの源流である「デイリーマート」はじめ米国での買収を進める一方で、国際石油会社「トタル」から欧州のSS網一部を買収など欧州、南米にも拡大し、最近は流通最大手「カルフール」に買収提案しています。
日本と違って、国際的にコンビニ買収とはSSも含めての買収を意味します。
日本のセブンSS業態は200弱ですが、米国では1万3000カ所以上の店舗数で、3分の2がガソリン販売をしています。総販売量は「年間4800万」ですから、23年度の日本の総販売量を400万も上回っています。元売3社が束になっても敵わないのが「時価総額」です。23日現在で、
○セブン 5兆3068億円
●ENEOS2兆3041億円
●出光 1兆5041億円
●コスモ 7006億円
元売3社足してもセブンに及びません。
報道によると、時価総額から6兆円規模の買収と想像されます。この規模は、かつてエクソンモービルがテキサスでシェールガス田を、RDシェルが英国の国際ガス会社を買収した規模に匹敵します。両社が日本市場を撤退した理由の1つとして、買収資金の調達があったとされるほどの規模です。流通業では史上最大規模となるでしょう。
ただし日経紙報道によると、日本政府は2020年から外為法を改正強化しています。
買収で企業の優れた技術が軍事転用される、代替がきかない製品の供給が途絶する、基盤技術の流出を防ぐためです。明らかに中国を意識したものでしょう。コンビニは指定業種ではありませんが、セブン&アイは対象業種です。180のグループ企業があり、事業により外為法の対象とみなされているようです。
クシュタール社はカルフールに買収提案をしましたが、仏政府は食料安全保障を理由にこれを退けています。セブン買収提案も政治マターになりそうです。
1975年に東京豊洲の小さな酒販店で始まった小売企業が、半世紀を経て6兆円の価値に拡大したことは感慨を覚えます。75年当時、石油村には数十店舗を持つ大手店がゴロゴロ存在していたのですが…。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局