最近、和歌山県のPB企業がテレビ局から“取材引く手あまた”の状況です。なにしろ大阪市街から60㎞南下すれば「30円安いガソリン」を給油できますから、メディアは放っておきませんね。
全国区になったN商A田さんはNHKで全国放映されました。地場展開のI橋さんやH口さんは関西民放局で取り上げられています。いずれも特集
番組で、テレビ業界で言う「尺」(放映時間)の長い取り上げ方をされています。社名とSS名も出ていますから、これってすごい広告宣伝効果です。
Google検索するとAIによるテレビCM料概要が出てきました。こういう料金だそうです。
「地方テレビ局のCM料金は15秒1本あたり5万円~25万円程度ですが、全国ネットでプライムタイムに15秒のCMを放送する場合、数百万円から数千万円の費用がかかることもあります」N商A田さんはNHKで「30分」ですから、CM料金に置き換えると数千万円前後の広告効果になります。残る2社もI橋さんは朝日放送で30分、H口さんは毎日放送のニュース特番で5分間ですから、数百万から1000万円の広告料に匹敵します。
昔なら全国各地に価格競争地域がありました。しかし、元売再編を重ねるうちにSS企業も“お利口さん”ばかりになって競争心を失っているようです。それだけに和歌山がクローズアップされます。
ところで、我らがCOCの同志I橋さんは朝日放送の「真夜中の定点観測」という番組で紹介されました。夜間に小売店・飲食店などに来店する顧客にインタビューをする内容です。給油行為は無機質ですが、話を聞くとお客さんの様々な表情が見えてきます。
灯油を購入する女性客は電気料金が高くなったから灯油ストーブに替えたそうです。で、この方、有名なゴスペル歌手で100人を超える生徒さんを抱えていました。奨学金をアルバイトで返済する女子大生は、しっかりと1000円だけ給油です。“満タン運動”を逆なでするようですが、お客さん個々に事情を抱えています。
カップルで来店した2人は元カレ元カノで、誕生日を祝って花火をしてきたという不思議な関係でした。
「お客さんの顔が見える」。これって成熟期に大事なことを教えてくれる気がします。
話は大きく変わります。元売大手3社の第1四半期決算は、在庫影響を含むと前年を大幅に上回っています。在庫影響除きでも出光興産とコスモは前年利益を超えています。
セグメント売り上げと利益の構成比を見ると、石油精製・販売部門(一部化学)は
① ENEOS売り上げ87%、利益55%
② 出光売り上げ82%、利益72%
③ コスモ売り上げ89%、利益63%
この他、原油高で石油開発部門は売上構成は大きくありませんが、利益で20%前後を担っています。相変わらず「石油一本足打法」から脱却していません。
ちなみに10年前(ENEOSはJX日鉱日石、出光は昭和シェル統合前)と比較してみると、原油高はあるものの石油セグメントの売上構成比は、コスモ以外は高くなっています。(グラフ)
10年以上前から、国内石油需要の縮小は明確に認識されていました。中期計画や長期計画で「脱石油」が謳われてきましたが、電気も再生エネルギーも姿が顕在化していません。
業態は異なりますが、隣接業界の優良企業・信越化学を見ると、10年間でセグメントは大きく変化しています。
石油と同じコモディティ主体の「基礎化学」や「石油化学」が「生活環境基盤材料」に、利益頭であった「製薬」と「農薬」は「機能材料事業」に組み換えが行われています。セグメントはバランス良く売り上げと利益構成されています。嫌味で書くわけではありませんが、補助金の追い風で値取りができて、自社株買いで株価を高値誘導する現状がいつまで続くのでしょうか。
私としては元売の今後を考えるよりも、PBSSの世界で“お客の顔が見えるセグメント”を布教するだけですが。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局