私は過去のしがらみもあって、COCに限定せずに様々な方とお会いします。元売系列店でも個々の経営体は多様であり、なにしろ中小企業の舵取りをする経営者の個性と戦略眼は品確法登録事業者数ぶん異なります。
従って、資源エネルギー庁、元売、全石連が何か言ったりやったりすることに対しても、各人それぞれ温度差があります。というか、「サプライチェーン維持」とか「最後の砦」と大言壮語する方々が、そこまで本気で語っているのか…。
某有力特約店社長と話したのは「この業界なにも変わらないね」でした。変わらないという言葉を正確に言えば「(系列大事の)石油村からは何も変わらない」ということです。
変えてきたのは、自由化時にPBに転じた独立系企業、そして異業種からの新規参入者です。
もはや30年になりますが、自由化時に系列取引関係が一変しました。数年の過渡期があって、金融危機も手伝ってSS企業倒産が相次ぎました。自由化前にあった「赤字補填」がなくなり、それどころか元売や卸しが銀行並みの“貸し剥がし”(代物弁済)まで行う場面がありました。
また、外資系が先行して取引契約を厳格化したことにより、過渡期の自由度を選択してPB化を選択する中小特約店やサブ店が増えました。“真面目なサブ店”が、PB化を機に消費者を強く意識してカーケアの大繁盛店になった例も少なくありません。系列店でも資本力のある企業は自己投資でSS網を拡大しました。
自由化を成長機会と考える経営者が少なくなくて、彼らは客数を増やすためにガソリンの安売りと並行してセルフ化を進めます。当然、「市況問題」が発生します。そして石油村からは極悪人扱いされて、マスコミ等で全ての問題の根源はこの事業者にある、と喧伝されます。
過渡期から自由化慣れすると、満を持して新規参入者が登場します。イオンが本格的なハイパー業態の嚆矢となり、一時期ジョイフル本田が“全ての問題の根源”とされます。今はコストコがその栄誉を担っております。
とはいえ、元売大手3社体制とガソリン補助金でなんとなくガソリン粗利安定という心地よい状況(地域差はありますが)が石油村の現状です。
それで、くだんの系列特約店社長と話題になったのが「元売アプリ」です。
私もドラッグストア(DGS)で勧められてアプリを利用しています。DGSは客単価が高いのでポイントが結構たまります。しかも、精算時にルーレットや15%値引きクーポンが出現します。累積ポイントとクーポンを併用したら3500円の支払いが2200円になりました。
DGS業界も再編で合従連衡が行われています。大きくなることで商品調達力も強化されて客数を増やすためのアプリ販促を推進しています。ただしDGSは、店頭に山積みされた特売品のティッシュやトイレットペーパーを除けば、店内商品の付加価値は非常に高いのです。ゆえに大手ほどアプリ販促に力を入れます。
元売アプリに話を戻すと、社長さんは「これって単なるガソリン値引きアプリ。一生懸命アプリ登録をするSSほど値引きが凄い」と言います。元売がアプリを投入するのは、顧客データを基に新しい時代のマーケティングを展開するということです。でも、どう活用するのでしょうか。
この世界は、先のDGSどころかわんさと先駆者がいます。彼らの多くは「店舗命」「客単価命」で、その入り口となるアプリを展開しています。私は、元売アプリは、DGS店頭に山積みされたコモディティであるトイレットペーパーを一生懸命安売りすることが、データベースマーケティングと考えているのかと、ひねくれて考えてしまいます。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局