COCと独立経営<919>自分の価格は自分で決める – 関 匤

長野県が“炎上”しています。
地元紙・信濃毎日新聞社が、長野市内の長野県石商組合員が週単位の価格変動時に、上げ下げ幅の価格を連絡し合っていたというスクープです。SS同士が連絡する電話の音声録音を入手しているとのことです。
ネット検索してみたら、長野のSBC(信越放送)のニュース番組動画が出てきました。いきなり「業界関係者」が音声を変えて登場して、生々しい事実を明らかにしています。なんらかの理由でSS側からの内部告発が信濃毎日にあったと考えられます。
長野の事情には門外漢であり余計なことは書けません。ただ、価格情報サイトのgogo.gsを見ると、2月3日で長野市内の主要な販売業者の店頭価格は「191円」で並んでいました。高知県とともに国内最高値の双璧です。


事実がどうあれ、COCには無関係な話です。独立系は仕入れが決まれば、安かろうが高かろうが売価は自分で決めるのが流儀です。
2015年にコストコが愛知県常滑市既存倉庫店にセルフSSをオープンしました。これが“常滑地獄の交差点”となりました。なにしろ愛知県屈指の独立系SSとイオンのSSが交差点で「三すくみ」になってしまいました。
コストコは当然のように最安値を掲示しますが、独立系SSはその下を掲示します。イオンは早々に競争から離脱しましたが、コストコと独立系は日本のSS市場初ともいえる際限なき安売りの応酬を続けました。

資源エネルギー庁調査で愛知県のガソリン価格が132円レベルの中で「85円」まで行きました。これは安値で鳴るコストコにとっても世界の出店国で異次元のレベルでした。間違いなく常滑の消費者は、メジャーも出せない世界一安いガソリンを給油していました。
当然、原価割れ販売です。「愛知県常滑市の中部国際空港の対岸地域で11月、ガソリンを著しく安い値段で販売したとして、公正取引委員会は24日、独占禁止法違反(不当廉売)の疑いで、2社に不当廉売をやめるよう警告したと発表した。」(日本経済新聞)とあいなりました。

これは独立系の勝利です。覚悟のうえでコストコを独禁法抵触行為に引きずり込んだのですから。まさに「肉を切らせて骨を断つ」です。上場企業のコストコを「独禁法排除勧告」というコンプライアンスに抵触する土俵に上げてしまったのですから。

実際、これ以降、両者は安値で睨み合いながらも“こいつらには追随できない”と市況の底支え機能を果たしています。
本気で「私の価格」を守るならば、競争相手と抱き合わせ心中する覚悟が必要であるという、ビジネススクールでテーマにしてほしい事例です。


だからお互いに連絡し合って売価を揃えるという噂が出ること自体、「自分の値段を自分で決める」というSS経営の魂が全く感じられません。
10年ほど前に、価格戦略の専門書を書いた外資系シンクタンクの方を訪問してお話を聞いたことがあります。
「プライシング(価格戦略)は小売り流通業の最重要な経営技術です!」。さすが価格で著作を出すだけあるなと感心しました。曜日や時間帯で価格を上げ下げする「ダイナミックプライシング」の話に聞き入ってしましました。
「ではガソリンは?」と聞いたら、「コモディティにプライシング戦略はありません。市況商品ですから基本は流れに委ねる。そこで価格レベルの幅の中でポジションをどこに取るか、それは経営者が考えることです。」
しれっと言われてお話は終わりました。

長野の件に絡んでだらだら書きましたが、要は「自分の価格は自分で決める」です。

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