前回、「PBドラフト会議開幕」と書いたのですが、石川県で一六カ所のPB企業買収が明らかになりました。契約金が幾らなのか分かりませんが、PBのスカウト合戦が幕を開けました。ボルボが19年から全車種をEV化する時代です。買い手があれば高く売るのが賢明でしょう。
買収されたA社は元COCです。経営者はやんちゃな一方で、凄く頭の切れる人です。事業の本質=一番おいしい部分を見抜く才能があって、かつ細かに計算できます。トラック運転手をしながら貨物の利益性を計算して、米穀業界に参入しました。米の安売りをしながら家庭とのつながりから灯油、LPGを扱います。
SSは段階的に自由化が始まった頃に参入しています。当時の業法でご法度の「未登録営業」でした。中部通産局管内ではもう一件同じ米屋さんの未登録営業が起こって、石油課長さんが左遷されました(私も会ったことのある好人物でしたが)。A社は後に太陽石油で枠付けされて、その時にCOCに入られました。独立経営者に仕入れから運営まで教えられたことには感謝していました。同時にCOCのSSが一斉に米を売り始めています。
自由化でセルフ化して出店攻勢をかけます。また、先物取引で一番風呂に入ると、半年先までの灯油を押さえて、官公庁入札を片っ端から落としています。得意の運送ノウハウでタクシーやバスにも参入しています。
かねがね言っていたのは、「規制のある業界は面白い」です。
建前が多いほど消費者とかい離するので、本音で行けば大衆の支持を得られるという意味です。会社を売ったのは、単純に面白い業界でなくなったからでしょう。
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さて、七月に入ってガソリン卸価格の系列・業転格差がブランド料以下に縮小しています。これで事後調整をやれば、業転格差は逆転します。全石連が夢見たPB苛めの始まりです。
しかし、おかしなことが起こっています。和歌山県です。かつて公正取引委員会から排除処分を食らった有名なPBがSSを買収して、6月から1カ月間にわたり「107円」で販売しました。完全な原価割れ販売です。
新規出店のセール価格の安売りは大目に見られますが期間は二週間です。和歌山では1カ月続きました。7月6日現在「113円」です。これも原価割れです。
以前なら、安売りだけの問題でした。しかし、今はおかしいのです。なぜなら、元売は業転出荷に際して商社に対して「販売先登録」を求めています。業転の届け先を把握しているのです。COCのPBも出荷数量を元売が掌握しています。私はこれを「管理業転」と呼んでいます。となると、元売は「原価割れ販売」を知りながら和歌山のPBに供給し続けていることになりませんか?
これって、独占禁止法に抵触する可能性もあります。どの元売もコンプライアンス(法令順守)を高らかに謳っています。現に某元売は行動指針として、「私たちは、コンプライアンスに違反する状態を放置せず、また加担しません」と明記しています。管理業転の実態に照らせば、明らかに原価割れ行為を“放置”し、行為に加担していることになりかねません。公取委の判断を聞きたいところです。
先述のA社長の言う通り、何でも建前だけで終わる業界です。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局