COCと独立経営<940>ガソリンが全米一安い小売業者の高評価 – 関 匤

米国のニューズウィーク誌が「全米ベスト小売業者ランキング」(America’s Best Retailers)を発表しています。
1位・カルティエ、2位・ティファニー、3位・トリーバーチと、世界に冠たる有名な高級宝飾とファッションスタイルのトップブランドが並びます。そして4位となったのが「バッキーズ」(Buc-ee’s)です。

SSでありコンビニであるという米国では当たり前の業態ですが、「カテゴリーキラー」(業態革新者)です。7000~8000㎡の敷地に100カ所以上の給油ポイントと大型コンビニ(日本の大型道の駅レベル)が一体化されています。ガソリンは全米一安いです。
「トラベルセンター」と呼ばれており、ハイウェイ立地であることから、日本のサービスエリアに近いでしょう。私は行けなかったのですが、COC会員有志が見学して腰を抜かしました。

バッキーズはテキサス州やフロリダ州主体から出店州を広げてはいますが、店舗総数は今年7月の新店で54カ所目です。広い米国においてはローカルチェーンに過ぎません。それが世界的ブランドショップと肩を並べて、伝統的なブランド力を持つ玩具のレゴやディズニーストアより上位にランキングされています。
日本ならローカルで54店舗の企業が、イオン、ユニクロ、セブンイレブン、マクドナルド等々を凌駕してランキングされるような出来事です。


バッキーズは1982年の創業です。
Web検索してみると、創業当時は同時代の日本のSSと全く同じ業態です。1世紀にわたり家族経営の雑貨店とガソリンスタンドを見ながら育った23歳の青年が、新しい形のガソリンスタンド+コンビニ業態を立ち上げたものです。

私の想像ですが、当時のSS(コンビニ)は石油会社系が主流を占めていました。メジャーはもちろん、西海岸にドミナントを特化したアルコ(ARCO)が「ampm」コンビニで名を馳せていました。後にジャパンエナジー(共同石油)が日本のFC権を取得して、当初はSS併設でスタートして(うまくいかず)単独店展開で2000年前後には知名度を高めました。

バッキーズは創業当初から「独立系」であり、いかにガソリンを安く売れるかという仕組みと、コンビニ商品の独自マーチャンダイジングを志向していました。恐らく1店舗の繁盛店を目指したはずです。
これは成長志向の高い経営者が1店舗に全精力を傾注すれば実現可能です。ユニクロもセブンイレブンも最初は1店舗でしたから。SS業界でも、具体名は言いませんが、系列1SSサブ店の繁盛店作りを志向した後継者が、自由化以降に高度成長している例が幾つかあります。

恐らく繁盛店作りの過程で、消費者の細かなニーズを汲み取り、経営者の意地でも対応しようとしているうちに、サービスや商品づくりの仕組みになったと言えます。バッキーズの場合は、石油系コンビニができない店内加工食品で鮮度を売り物とし、クレンリネス、きれいなトイレなど、商品にとどまらない店舗とサービスの鮮度管理に踏み込んだのでしょう。

繁盛店作りを進めながら、恐らく経営者にはもっと大きな店舗で、もっとドライバーニーズを満たしたいという店舗づくりの夢が芽生えたはずです。それが「トラベルセンター」というサービスエリアのような業態です。
米国には「トラックストップ」という、日本のフリートSSがあります。大型でレストランや宿泊施設もあります。ただし“ガテン系”のイメージが強く、バッキーズはそのアンチテーゼとして子供が楽しく過ごせる場所として業態を設計しています。


そしてバッキーズは自治体にも人気ものです。7月に初出店したバージニア州知事は「バッキーズを温かく迎えることができ、誇りに思います。この店舗は200人の雇用と6000万ドル以上の投資をもたらします」と声明を発表しています。これって日本の自治体の“コストコウェルカム”と同じです。

コストコは1977年、バッキーズは1982年創業とSS業界では新興企業です。社歴が圧倒的に古い日本の石油村は何をしてきたのでしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206