COCと独立経営<941>乖離する元売と小売り業者 – 関 匤

系列特約店の経営者と懇談しながら、「ところで元売はSSリテール分野で何をしているのだろうか」という話になりました。結論は「何も考えていない」で一致しました。
というか何も考える必要がないのでしょう。「リテール」の意味が、元売と小売業者では全く違うのです。元売の考えるリテールとは、
① 効率的な物流
② ①を可能にする蛇口としてのSS網
③ SS数×個数の油外収益
効率的な物流は製油所からトレーラーによる直送が増えることであり、それを可能にするのが立地の良い「蛇口装置」としての大型セルフSSの配置です。

そして油外収益ですが、系列SSがオイル、タイヤ、バッテリーをちょっとずつ仕入れても、掛ける数千カ所のSS数で元売の油外部門が成り立ちます。
一事が万事で、元売にとってはノープロブレムです。
しかも特約店さんたちがゴルフ・飲食接待付きのお付き合いをしてくれるという、令和の今どきに珍しい産業構造です。
要は、燃料油とお付き合い油外商品の数量管理をすることが元売リテールです。今に始まったことではありませんが。


一方、小売業者が考えるリテールはこういうことでしょう。
① SSが安定的に黒字計上する
② そのための収益事業を確立する
③ 収益モデルができたら店舗網拡大

小売経営者にとって給油は不安定収益です。ガソリン補助金以降は黒字化しているようですが、いつまた減収減益するかもしれません。市況商品を小売経営者が制御できないからです(談合でもしない限り)。

そこで収益事業を何とか立ち上げたいとなります。
油外で言えば、オイルやタイヤのキャンペーン油外から脱却して、車検・車販・板金・レンタカー・保険のすそ野を広げながら従来の手間賃油外を「事業化」することです。収益モデルに確立される過程で、社員の年収が上がり同時に人材が育ちます。
人材が育てば、収益モデルの多店舗化を展開できます。

経営者は限られた資源の中で、構想実現のために繰り返し実践しては失敗を検証しながら再度実践を繰り返します。企画通りにうまくいくことなどないからです。そして実効性の高い方法論を外部にも求めます。
その時の「外部」とは誰でしょうか? 間違っても元売ではありません。車検、車販などそれぞれの専門業者です。それは油業報知新聞掲載の様々な専門企業によるセミナー記事を見れば一目瞭然です。

カーケア以外でも、例えばコンビニ併設店であればコンビニ本部のSV(スーパーバイザー)が問題解決に取り組みます。(できないSVは淘汰されます)

燃料油需要が縮小する中で、市場に直面する小売業者は形を変えつつあります。変えるとは、燃料油利益への依存度を下げることです。
そんな時代に、石油供給の“お付き合い”がいつまで続くのでしょうか。


自由化の前年、1995年に「石油流通ビジョン研究会」(資源エネルギー庁諮問機関)は、今後のSS経営に4つの方向性を示しました。
① サービス充実型
② 量販志向型
③ 多角経営型
④ 早期撤退型
「早期撤退」の4文字に一部が怒り狂いましたが、SS数が半数以下になっている現実を見ればビジョン研の方向性通りです。
そして①から③に関して、粛々と小売業界は動き、カタチにした企業も少なくありません。それは元売のリテール支援で成り立ったものでないことは言うまでもありません。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206