ロイター電が関係筋の話として、興味深い記事を打ちました。
「カナダの主要産油地域アルバータ州は、日本の石油精製部門への金融投資を検討しているもよう。…アルバータ州政府は複数の日本の石油精製会社と初期段階の協議を行っており、同州のオイルサンドで生産される重質油を1社または複数の日本企業が処理できるようにするコークス炉の建設資金を支援する合弁事業の可能性を模索している」
カナダが、原油輸出先として日本に秋波を送っているという内容です。カナダは世界第4位の産油国です。2024年の生産量は580万BDと非常に大きく、2035年には620万BDに達すると言われます。
「カナダ連邦政府のカーニー新政権は米国関税への対応を最優先課題に掲げ、エネルギー政策ではインフラ設備の許認可の迅速化を図り、米国以外への代替輸出ルート開拓を急ぐ方針」(エネルギー・金属鉱物資源機構)と、“トランプ関税”がカナダの石油戦略を米国依存から多様化に向かわせているようです。
内陸のアルバータ州から太平洋までパイプラインのインフラが整備され、重質油の残渣油処理に石油コークス建設資金を支援すると、具体的な提案も書かれています。カナダ産原油はビチューメン(アスファルトの古語)で超重質油ですが、出荷前に熱分解と水素添加等によって通常の原油並みに調整されます。
アルバータ州で思い出しました。2017年のブルームバーグの記事です。
コスモエネルギーHDのコスモ石油・小林久志社長(当時)がアルバータ州のマックウェイグ=ボイド・エネルギー大臣と会談したというニュースでした。2人が握手する写真が掲載されていました。
同州が延伸中の太平洋岸へのパイプラインにコスモ石油が興味を示しているという内容でした。ブルームバーグは「(コスモは)ゲームチェンジャーになる」と格好いい見出しを付けていました。
2017年9月にコスモ石油自身がニュースリリースしています。
「日加間における将来のエネルギー需給や、当社が原油調達先の多角化の観点からカナダ産原油に注目していること、また、アルバータ州政府の今後の政策などについての情報交換を行い、互いの理解を深めました」
コスモ堺製油所は「ボトムレス製油所」と呼ばれ、国内屈指の残渣油分解能力を持ちます。うがった見方をすれば、ロイター電通りならコスモが輸入の尖兵になるはずです。確か同社はカナダからコンデンセート(超軽質原油)を輸入した実績がありました。
対日原油輸入が増大すれば、エネルギー安全保障上、カナダ産は非常に大きな意味を持ちます。
中東からの原油輸送は、ホルムズ、マラッカ、中国が支配を強めんとする南シナ海など危険地帯を長期間航行しています。
一方、カナダは太平洋横断です。カナダ・米国海軍と海上自衛隊の制海権であり極めて安全です。保険料は中東に比べて相当安価になります。さらに航海日数だけだとバンクーバーから日本へは2週間前後です。サウジ~日本は40日以上を要します。
距離の運賃と保険料は中東ルートに比べておおむね半分で済みます。
ウクライナ侵攻をしていなければ、日本の“お隣さん”ロシア原油の輸入が増えていたでしょう。その点、最も安全な資源調達としてカナダの存在が急浮上します。トランプ関税の奇貨として、政府のエネルギー政策はカナダ原油にどう向き合うのでしょうか。ちんたら議論ばかりしていたら、中国に横取りされてしまうでしょう。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局