COCと独立経営<575>高度化法で「九州石油」が復活?-関 匤

日本経済新聞8月25日の朝刊トップ記事に「製油所再編で競争力 経産省、高収益品の増産促す」とありました。

経産省は、2021年までに製油所分解装置の高度化で製油所の生産を5%拡大する、装置増強や他社との融通のために200億円の補助金を盛り込むとあります。記事はどう読んでも経産省によるリークですね。

これまでは精製能力を分母に分解能力比率という数字のマジックで「高度化」してきましたが、今度は分解設備投資を求めるものです。アジアの新興製油所に対して、わが国製油所の設備能力の弱さが指摘されてきましたが、いよいよ本格的に設備対応するということです。

そして、さらなる精製規模縮小です。今度は能力削減ではなく、製油所の廃棄あるいは基地転用といった方向に進むと考えられます。石油製品輸入も本格化しそうです。(あくまで日経記事のニュアンスで書きますが)

欧米ではすでに30年以上前から行われていたことであり、日本の石油産業は本当にスピードが遅いと感じます。政治、官僚、業界団体が利権調整をしながら歩んできた結果と考えています。どこか責任主体が不明確なのです。

それはともかく、昨年の精製流通研究会で資料に出た米国ヴァレロ社は80年代の精製高度化を機に急成長してきた会社です。石化会社で高度な分解装置を持ち、精製能力は小さくてもコストゼロの精製残渣油から白油を生産したのがきっかけで、今ではエクソンモービルと双璧の精製会社です。テスロやモティヴァなども90年代に急成長しています。

欧州では、精製廃棄と製品輸入が進みました。そしてイネオス、ペトロプラスが成長します。いずれも石化会社で石油会社が放棄した固定費の低い老朽製油所を徹底稼働させました。しかし環境規制や税制に米シェール系石化製品攻勢もあって2010年以降、ペトロプラスは破産、イネオスは中国合弁ながら厳しい経営のようです。

日本は欧州に似ています。製油所が老朽化している上に、本格的な製品輸入の足音が聞こえています。そして欧州と同じ状況の元売が、成熟時代に巨額の分解装置投資する余裕があるのでしょうか。

冒頭の記事を深読みすれば、存続する製油所は「共同製油所」ではないでしょうか。すなわち、元売単体ではなく(想像ですが)電力、都市ガス、石油化学あるいは総合商社など広く資本を集めて高度化するということです。欧米では石化が主役となりましたが、単独で製油所を抱えるのはリスクが大きいと思います。そして共同石油には、わが国に前例があります。「九州石油」です。

九石は、新日鉄、九州電力、昭和電工など九州の需要家と総合商社の共同出資会社でした。ひょっとすると元売再編が巡り巡って九石に戻るかもしれません。

そして九石の実態がそうであったように、元売は「精販分離」に進む可能性を感じます。供給販売会社として石油流通を環太平洋市場に拡大する。手間のかかる国内はFC的な系列店以外は、流通の自由度を高める。欧米の前例に倣えばそういう方向ではないかと考えています。

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