ウェブで戦後の石油配給を検索したら、ちょうど70年前の昭和22年10月に石油配給公団が発足、翌11月に「石油製品配給規則」が公布されていました。
全国の販売業者が指定されて、その中に出光興産がありました。この時点で同社は日本石油の特約店でした。2年後、公団が廃止されて元売制度が発足して、10社が指定されて出光も元売となります。同時に、日石との特約店契約が解消されます。ここから系列店拡大競争が始まって行きます。
なぜ、こんなことを検索したかというと、現在の石油産業が逆説的な意味で「統制経済」の様相を呈していると感じたからです。独占的なシェアを持った元売を「公団」と置き換えると、きわめて70年前と似たような状況です。石油公団の役割として
① 物価庁の定める価格による石油類の一手買取りおよび一手売渡し
② 石油類の販売業者の指定
――があります。公団は日石など8社の精製業者から生産品と輸入製品を買い取って、販売業者に売り渡します。販売業者は商工大臣の許可で指定されました。
「物価庁の定める価格」をOPISとかRIMに、「販売業者の指定」を流通経路証明に置き換えてみると、印象が重なってしまうのは私特有のうがった見方でしょうか。70年前は石油を売りたくても無かった故の統制であり、現在は売れないのに余っているが故の統制に見えてしまいます。
こういう時代にシェア50%の元売が出来れば、民間人の姿をした公団になりえます。金融市場でも、参加者が少なければ小さな投資で相場を動かせるのと同じ理屈です。経産官僚は70年の時を経て、見事に歴史の巻き戻しに成功したかもしれません。
もっとも、PBも仕入れは上がってもおおむね粗利が増加しているので、COCの会員も面白くはないけれど零細企業は蟷螂の斧ですから、粛々と経営しております。
そして元売各社は景気の良い中間決算です。原油高と好市況が追い風となり、JXTGは純利益で1233億円、出光は573億円、コスモは223億円。
私は決算を見る際に、事業セグメントに興味を持っています。元売は、石油や金属などコモディティで利益のほぼすべてを稼いでいます。石化もオンリーワン製品がほとんど見当たらず、つまり「市況波乗りモデル」で決算は相場次第です。将来の企業ビジョンをどう描いているのでしょうか。
欧州でRDシェルCEOの発言が物議を醸しています。「次に乗る車はEVだ」です。実際のCEOの車はハイブリッドですが、CFOの方はベンツのフルを運転しているそうです。肉屋がベジタリアンになるのかと批判もあるようです。
ただし、同社は「2030年に全世界の石油需要がピークアウトする」想定を前提に業態転換に向かっています。SS部門ではEV給電を持つ大型コンビニ複合店を開設しましたが、担当役員が「石油ではなくフードサービス業者だ」と述べています。また、無人セルフSSでAIによる自動価格設定まで始めています。根底には石油というビジネスモデルに対する強い危機感があります。
日本では、70年前のビジネスモデルに回帰するという“怪奇現象”が起こっているようです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局