COCと独立経営<615> 給油と油外販売 – 関 匤

出光創業家の強硬な反対で暗礁に乗り上げていた出光興産と昭和シェル石油の経営統合が、創業家の翻意により一転、来年4月に合併新会社が発足すると、一般紙で報道されています。

この合併が実現すると、国内石油流通は2社で80%を支配する、事実上の寡占状態となります。とは言え、20世紀初頭のJVロックフェラーの時代と異なり、需要減少時代です。石連統計で17年度ガソリンは前年比1.3%減、ピーク時に対して16%減。5180万㌔㍑の実績は1995年並み。自由化から20余年で実績は振り出しに戻りました。

出光はベトナム新設製油所が稼働し、米豪で数百万㌔㍑を販売するジョバー、有機ELに全個体電池開発などヒトモノカネが国内石油販売以外の事業に本格傾斜するでしょう。

国内の系列・非系列で何をどうするかは、私ごときに想像もつきません。明らかなことは、石油販売においては昨日と同じ明日はないことです。

6月21、22日と平成30年度COC通常総会と研修会を行いました。

「コ・ブランド」が大きなテーマになりました。SS機能と流通やカーケア機能との業態融合、分かりやすい例がコンビニ併設です。SSと併設業態の来店頻度の違いで、SSは月に3回前後に対してコンビニは15-20回と大きな差があります。コンビニの来店周期の中でガソリンが売れるというのが欧米SS業態転換の大きな要因にあったと思います。

ここで連想したのが、SS伝統の油外販売です。タイヤ、オイル、洗車、バッテリー…いずれも購買頻度はガソリンより低いわけです。洗車は月1.5回というデータを見たことがありますが、顧客の温度差が大きいと思います。私も横着で2カ月洗車をしないこともあります。洗車しなくても車は走るので、私と同じような消費者は少なくないでしょう。

1960年前後にSS店長を務めた方の話を思い出しました。当時の乗用車台数は「50万台」。現在は6100万台ですから百分の一以下です。だからSSのガソリン販売量は店頭で20㌔㍑あるかなしかで、自家用スタンドへの外販と合わせても30、40㌔㍑程度だったそうです。

その代わり、油外商品はすべての来店客が購入したそうです。未舗装道路が多く、車も進駐軍のお古が多く新車も機能が低かったことがあります。だから給油時にオイルやラジエータ液の補充、タイヤパンク補修、グリースアップなど必ず補充・補修が発生しました。給油と油外の頻度が一致していたわけです。この当時の基本サービスが、その後のドライブウェイコンテストの「型」になりました。給油と油外販売は表裏一体の関係で“コ・ブランド”であったと言えます。

現在、乗用車が百倍以上も増えて、かつての富裕者層だけの世界から一般消費者に主体が変わりました。道路は砂利道を探すのが難しいほどで、あぜ道まで舗装されています。路上のオイル漏れを見なくなりました。自動車は90年前後にメンテナンスフリーが謳われ、機能は高まる一方です。1960年に1割だった軽自動車は3台に1台と車種構成も変化しています。

相対的にメンテナンス機会が減少して、給油に対して油外の購入頻度が低下しています。大手カーショップは70年代以降、一般消費者の急増に対応しながら、油外をSSから収奪しました。しかし90年代後半以降は経営立て直しを図って、車販、車検、板金を主軸としています。

同じ戦略で高い成果をあげるSSも増えています。カーライフのサイクルで油外を販売する方法論です。人時生産性が高いので人手不足の中で給与アップも望めます。

一方で、私が疑問視するのが単品のキャンペーンです。会社の収益は増えますが、費用対効果を考えると人手の消耗戦ではないでしょうか。車も人も変わったのに、1960年の成功体験という“亡霊”に憑りつかれているように思えてしまいます。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206