COCと独立経営<618> 仮説・コストコ倉庫店 – 関 匤

コストコが倉庫店出店とガソリン販売の拡大を表明したことで各地の石油組合が神経質になっています。全石連は政治陳情して、出店自粛や価格是正を求めています。

COCの会員は、どういうわけかコストコの立地条件と重なる方が少なくありません。もちろんコストコのガソリン販売は迷惑至極ですが、独立系には政治力がないので皆さん粛々と経営しておられますが…。

コストコの大きな特徴は、商圏の広さです。3年前、愛知県常滑でCOC会員とコストコが壮絶な原価割れバトルを繰り広げて、公正取引委員会がタオルを投げ込んで中断させたことがあります。その渦中にコストコの駐車場を見たら、地元より岐阜や三重の車番が多いことに驚きました。

倉庫店と自称するように、商品荷姿が業務仕様であり、買い物に車が不可欠です。そして、年間費に加えて高速料金を払ってでも来店するのは価格競争力以上に商品競争力を持っていることです。「コストコ」を検索すると、ファンによるSNSやブログなどコミュニティが存在しています。

また、4年前に明治大学商学部の学生がコストコ店頭でヒアリング調査を行っているのですが、来店客の9割強に同行者がおり3人以上の同行が5割もいました。そして購入商品の消費に関して、過半数が「友人と分け合う」と答えています。

つまり、消費者はコストコを「共同購入」に利用しているということです。複数人で大量購入して分け合えば、高速代やガソリンのコストを掛けても、コストパフォーマンスが高いと判断しているのでしょう。

明大のアンケートで残念なのは、利用頻度とどこから来店したかを尋ねていないことです。

私はコストコについてこんな仮説を持っています。

①利用頻度が食品スーパーより少ない

②足元商圏の利用客が意外に少ない

あくまで仮説ですが、会費制の倉庫店という特殊な業態ゆえに半径5㌔㍍といった足元商圏だけでは成り立たないのではないかと考えています。そこで大きな荷姿と価格メリットで、県境をまたいで会員商圏を拡大するのでしょう。

するとガソリンでも仮説を述べれば、

①足元商圏より広域来店客の給油が多いのではないか。

②広域商圏から実績を合成するので意外に地元SSの減販は少ないのでは。

そこでコストコ直近商圏のCOC会員に聞いてみました。「その通り」と明快に返答いただきました。「広域の市町村から2、3%ずつつまんでいる感じ」だそうです。逆に、SS単独店が安売りすると、足元商圏をごっそりと収奪します。コストコが迷惑なのは、広域ゆえに価格のアナウンス効果も広くなることです。

10年前に訪米した時、コストコを目の当たりにしてCOCの量販経営者が驚愕しました。アプローチを長くとった動線誘導の素晴らしさでした。アイランド前で車列がまっすぐ一本につながり、効率かつ客同士のトラブル防止になっています。

しかもアテンダーを配置して、ハンデキャップ者の手助けをしていました。「日本でやられたらたまんない」と言っていましたが、倉庫店がこれほど日本の消費者に支持されるとは想像できませんでした。

先の明大ヒアリングによると、来店客の6割が20代、30代です。彼らはバブル崩壊以降に社会人となった人たちです。

この人たちは土砂降り就職、年功序列・終身雇用の崩壊など”良い思い”をしていない方が少なくありません。恰好よりも維持費と燃費重視の軽自動車で満足します。同じく維持費を嫌って、ルームシェアリングやカーシェアリング普及の中心世代です。

もう1つ仮説を言えば、この世代とコストコがシンクロしているのではないか、です。その通りならば、今後もコストコのファンコミュニティが拡大することになります。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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