COCと独立経営<620> SSは小売業か?不動産業か?- 関 匤

COCも、次世代経営者へ経営継承の過渡期を迎えています。

30年前に組織を創設した親世代とは、やはり蛙の子と思わせるところもあれば、人生経験や感性の違いも感じます。決定的な違いは置かれている環境です。

親世代はガソリンも灯油もよく売れて、油外事業でも従来のTBA商品にニーズがありました。さらにはSSを拠点としたお米や飲料箱売りなどにも取り組んでいました。フルサービスで顧客接点も強固でした。SSそのものに夢がありました。

一方、次世代はガソリンが伸びなくなり、セルフで自動販売機化して、給油に関しては立地・設備・価格のハード要因が支配する時代に直面しています。

油外も従来の単品販売では人件費・販促費とのバランスが難しく(レバーレートの低さ)、整備・車販・板金は収益性が高い一方で設備、教育、販促に覚悟を以て望む必要があります。

そして、自由化以前はSSという一業種内の競争で完結していましたが、他業界でも規制緩和があって、とりわけ車検などは広く整備市場の中での争奪戦となっています。またコストコなど新規参入の流通系の存在もあります。核店舗での利益構造と集客力を確立しており、SS同士なら何とかなるガソリン価格競争では太刀打ちできません。

しかも、どこの業界もSS同様に市場成熟にあります。異業種格闘戦、何でもありの日大タックル状態です。

親世代は銃剣突撃で戦えましたが、次世代が直面しているのはイージス艦やB2爆撃機が飛び交う戦場といって過言ではありません。

大げさな言い回しかもしれません。現状のSSは市況の安定で給油収益が回復しており、経営者も余裕があるかもしれません。

ならば今のうちに、次世代を徹底的に考えようと理事の方々と話し合って、「ビジネス研究会」をかなりの頻度で開催しています。なんでもいいからやってみようというスタンスです。

親世代は「油屋」という共通項で同業者間の連帯意識がありましたが、次世代の企業経営は散弾のように多様な方向に走っていきます。2025年頃に「そういえばウチはSSやっていたよな」とつぶやく人もいることでしょう。そのためにも、ビジネス情報を千本ノックのように浴びせかけたいという気持ちです。(行動が追いつきませんが)

こういう業態革新を煽りながら、一方でSS企業はふつうの小売業と少し違うとも感じます。もともと開業コストが高い業界なので、地域の資産家が担い手となりました。一SSのサブ店はよく「零細」と呼ばれますが、零細なのはガソリン販売量であって貧乏人ではありません。

自宅の近所に最近まで一SS店がありました。元売直営に囲まれて大変だなあと思っていましたが、SSの周囲に相当数のアパートや駐車場と大邸宅を構えています。

SS企業の実態は不動産業に近いと思います。だから、SSも不動産として経営している方が少なくないと感じます。不動産にガソリン売上げと粗利を載せて利回りが合うかどうかを判断することは別に悪いことではありません。

ただ、あまりに不動産志向が強まると、小売りサービスで新しい方法論を開発するという考え方よりも、資産有効活用に関心が強まると思います。すると次世代の方向性も「資産管理会社」に向かうことになります。

一方で、SSを「最後の砦」と称して死守すべきという大きな声があります。ならば小売り事業として収益を創出することが車の両輪となります。そのためには砦の守備隊となる他人従業員を育て上げ、有効な武器を持たせる(投資する)ことが不可欠になります。

COCの親世代は小売業者としてユニークなノウハウを開発し、投資しました。

私としては次世代の方々には、小売業者であってほしいと考えています。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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