独立経営の視点から、SS経営に関わる諸問題と課題を整理してみます。
①需要の成熟化(来店頻度の減少)
②SS減少とSS過疎地域
③安定調達
④自動車の動向(内燃機関とEV)
⑤後継者難(転業・廃業)
⑥人手不足と人材育成
⑦セルフ監視のあり方(消防規制緩和)
⑧収益事業の拡充と模索
⑨キャッシュレス対応
⑩物流対策
独立系の視点ですから、“サプライチェーン維持”とか“緊急時対応”など元売や政府に関わる課題は除きました。また、コストコ、全農あるいは優良業者の市場攻勢といった価格に関するものも独禁行政の判断なので除外しました。
全ての問題と課題を網羅しているわけではありませんが、根底にあるのは「客不足」ではないでしょうか。SSで何かをやろうとすれば、やはり給油客数が必要です。量販すべきではなく、零細規模でもその客数を維持、拡大することです。
給油客数となる17年度でガソリン需要はピーク比16%減です。今年1―5月も前年比1%減と、減少傾向は構造化しています。
一方、乗用車登録台数はわずかながら(0.5%)増えています。「給油見込み客」は増えているのです。
したがって、需要減少は明らかに高燃費車とりわけ軽自動車が大きく影響しています。また、裏付けデータに乏しいのですが、セルフSSの増加により定量・定額給油の自由度が高まったことも要因と思われます。COCのセルフSSで聞いたら、10年前1台25㍑が現在17㍑まで落ちているそうです。
燃費と給油数量が減販の要因です。各地で石商が満タン運動を行っています。ただし、石商は緊急時対応を前面に出していますが、独立系としてはマーケティング戦略で満タンに誘導できないかを考えたいところです。前述の給油数量17㍑を25㍑に戻せば147%の増販です。市場に訴える安売りではなく、顧客に訴えかける有効な販促策と魅力あるサービスはないかと模索しています。
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興味深いニュースがあります。牛丼の吉野家とはなまるうどんのグループが、ファミレスのガストと企業、業態の垣根を超えた共同販促を開始します。
共通値引き券を提示すると、吉野家で80円、ガストで100円、はなまるで天ぷら1つ無料です。彼らの客単価からすれば顧客にとってかなり魅力的です。値引き券は何度でも使えます。三者は業態と客層が異なります。吉野家とはなまるが共同販促した際に、吉野家に女性客が増える効果があったそうです。ガストが絡んで3者が新規客のすそ野を広げる狙いです。
ここにも外食産業が「客不足」に直面している事情があります。コンビニがチルド・冷凍食品など「中食」を拡充していることも外食産業に危機感を高めているようです。どこの業界も客不足に悩んでいるのです。
であれば、SSもこの発想を応用できないでしょうか。中小企業は経営者個人の能力に負っています。元売販社や大手企業はともかく、中小店1社で打開できる環境ではないと思います。
ガソリン販売は得意だがカーケアは苦手、カーケアは体制ができているが仕切りが高くて有効な給油客数対策ができない、販売促進大好きだが金がない…のであれば、連携して客数の相互融通と新規客取り込みを考えるのが健康的だと思います。
もっとも、地域内の同業者は往々にして犬猿の仲であり、維持も張るので簡単にはできないでしょうが…。
小売産業すべてが客不足に直面しているのですから、相互メリットが考えられる業態との地域共同販促はありと思います。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局