先日、四日市市のガソリンスタンドでまたガソリンが混入した灯油が販売される騒ぎが起きた。今回は、ローリー操作者が誤って荷降ろしたという類のものではなく、資源エネルギー庁の抜き取り検査で判明したとのこと。何でも、灯油の引火点が、通常40℃以上のはずが、36℃だったらしい。エネ庁の抜き取り検査、しかも灯油の検査なんてウチには来た記憶がないなあと訝しく思ったのだが、もしかすると、三重県では2ヶ月ほど前に津市で大きめの混油騒動があったので、その影響で異例の検査が行なわれたのかもしれない。
で、原因はというと、ローリーのホース内に残っていたガソリンが灯油タンク注油時に混ざったのではないか、と。今回、どれくらいの量のガソリンが混ざってしまったのか、それが一度の荷降ろしでそうなったのか、何回、何十回もの荷降ろしを経て“ブレンド”されてしまったのか詳細は分からないが、タンクローリーの枡や管、ホースに至るまで厳密に油種別化しない限り、地下タンク内の油を“純度100㌫”にすることは不可能だろう。要は許容範囲の問題だ。
とにかくタンクローリーの運転手には、いつでもはじめに灯油を降ろすようお願いしている。従業員にも灯油の注油口のふたを閉めるまでしっかり見届けるように言ってある。それでも、人間のやることだから、うっかりミスが起こるかもしれない。心配し始めたらきりがない。私が従業員に一番うるさく言っていることは、タンクローリーの運転手には「親切にすること、しかし、絶対に親密にならないこと」。
「親切」というのは“ご苦労様”とか“ありがとう”という言葉を掛けたり、時々缶コーヒーなどを振る舞うなどしてねぎらってあげること。そうしたちょっとした“お愛想”が、彼らに一手間掛けた作業を促すことになると思うからだ。また、ローリーの“味方”になってあげることも必要。以前、給油が終わったあとも、車内で電話をしていて動こうとせず、ローリーが入れないことがあったので移動を促したところ、怒り出した客がいた。「客とローリーとどっちが大事なんだ」というわけだ。構内の安全を最優先に考えているので、できるだけ早くローリーを所定の場所に誘導しなければならないと答えると、「こんな失礼な店にはもう来ないぞ」と怒鳴るので、「二度と来ないでください」と─。
一方、「親密」になることは、厳に慎むべきである。親密さはしばしばなれあいにつながる。信頼しているからなどと言って立会いを怠るような行為は言語道断。また、立ち会いながらぺちゃくちゃと世間話に花を咲かせるのも厳禁。信じ難いことだが、おしゃべりしている間にどちらもガソリンが灯油タンクへ流れ込んでいるのにまったく気づかずにいたという事例もある。だから、ローリーの運転手が「今日は寒いですね~」などと気さくに声を掛けてきても、笑顔を浮かべつつ「そうですね」と応じたあとは、作業を注意深く見守る姿勢を保つことで、緊張感を持続させる必要がある。ローリーの運転手と“おともだち”になってはいけないのだ。
同様のことは、お客様との関係についても当てはまる。お客様に「親切」にするのは当然のことだ。宮沢賢治じゃないが『東に給油の仕方がワカラナイという人がいれば行って教えてあげ、西にキャップが開けられない人がいれば行って開けてやリ…』という具合に、お客様をできる限りお助けするよう努めているつもりだ。しかし、昨今はめっきり減ったとはいえ、「給油してほしい」とか、「窓を拭いてくれ」などの、原則を超えた要求には、温和な態度を保ちつつも毅然とした態度でお断りしている。昨今の減販傾向で、もうちょっとあれこれサービスしないといけないんじゃないか、と迷わない日はない。しかし、客と「親密」になることは、セルフスタンドの生命線であるローコスト経営を崩壊させることになると考えている。とにかく、ローリーの運転手とも、お客様とも、信頼関係を築きつつもなれあいに陥らないよう気を付けなければならない。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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