vol.756『セブンペイ』

『セブン&アイ・ホールディングスが始めたスマートフォン決済サービスで不正アクセスによる被害があった問題で、同社は4日、約900人計約5500万円(4日午前6時時点)の被害を確認したと発表した。既に停止しているクレジットカードとデビットカードのチャージに加え、現金などでのチャージも停止する。サービスへの新規登録も一時、停止するという』─7月4日付「日本経済新聞」。

2万1千店を超えるコンビニ最大手、「セブン-イレブン」で1日から開始した独自バーコード決済サービス「7Pay」。国内のキャッシュレス化を大きく前進させる動きとして注目されていたが、まさかの失態。「セブン」店頭では、今年一番の目玉キャンペーンが急遽中止となり困惑が広がっているとのこと。また、経産省は安全対策が不十分なら、消費増税対策のポイント還元に「セブン」を参加させない方針とも報じられている。

すでに中国籍の男二人が逮捕されているとのことで、背後には国際詐欺集団が関与しているとも報じられているが、真相が明らかになるにはまだかなり時間が掛かりそう。一方、「7Pay」のシステムの脆弱性については、すでにネット上であれやこれやと指摘され、セブン&アイHDは、とりあえず、2段階認証を導入することと、サービス利用に向けた入金の上限額を引き下げることを決めた。

『消費税対策の優遇措置を見据えたタイミングでの独自キャッシュレスの導入は、コンビニ業界が抱える人手不足対策の上でも重要だ。ある大手コンビニ関係者は「セブンは自社の電子マネーを優先していたためか、バーコード決済で出遅れていた。今回、スケジュール先行で導入を急いだあまり、業界全体の信頼を損ねた」と落胆する』─7月5日付「産経新聞」。

しかし、だからといって“それ見たことか、やっぱりスマホ決済は怖い”と決め付けるのはいかがなものか。もう少し冷静に問題を見るべきだと思う。そのうえで言いたいのは、そもそもスマホ決済がそんなに魅力的なツールか?ということ。市場調査会社のリサーチ・アンド・ディベロプメントが、首都圏在住の20歳から69歳を対象に「キャッシュレス決済」に関する調査を実施したところ、スマホQRコード決済の「所有・登録経験あり」と回答した人は29.2㌫だったものの、登録者の約半数が使っていないという結果が出ている。

同じ調査では、店での買い物について決済方法別の利用率も調べているが、スマホを使った電子マネーの利用率は19.2㌫だったものの、金額割合では3㌫程度と少額での利用が多く、意外にも現金決済割合が高いのは20代男女だとのことだ。“あっちのペイ、こっちのペイ、そっちのペイ…”といろいろな決済アプリをダウンロードして、どれがどれだったかわからない、スマホにこれ以上アプリを入れたくない、なんてつぶやきも。そのうえセキュリティ強化で設定に手間が掛かれば“スマート”でなくなってしまう。

それでも、昨今QRコード決済がもてはやされるのは、ひとえにキャッシュバックの特典があるから。それがなくなったら、いまのところ何の魅力もない。決済事業各社は、巨額の販促費を投入し、我こそがキャッシュレス社会の覇者にならんとして、利用客獲得争いをヒートアップさせており、さながらバブルの様相を呈している。気前良くばら撒かれるインセンティブ目当てに人々が群がる。そして、むかしから、大勢人が集まる場所には、スリや置き引きも集まってくるのが世の常だ。それが電脳社会に置き換わっただけ。「セブン」のような事件は今後も生じるだろう。今回被害にあった人が「(特典として)おにぎり1個もらえるんで登録したら、40万円も取られちゃった…ばかみたい」とテレビニュースで嘆いていた。40万円…しゃれにならん。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
(このコラムに関するご意見・ご感想は、FAX 0561-75-5666、またはEメール wadatradingco@mui.biglobe.ne.jp まで)


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206