『東京商工リサーチが8日発表した2020年度上半期(4~9月)の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年同期比9.4㌫減の3858件となった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の資金繰り支援策の効果で、上半期としては30年ぶりの低水準に抑えられた。だが、業種別では宿泊業が2.5倍、飲食業が6.1㌫増と大幅に増加、厳しさが改めて示された』─10月8日付「時事通信」。
コロナ禍が起きなくても、売上げが減少傾向にあり、資金繰りが苦しくなっていたであろう中小企業にとっては、思いがけない「救いの手」が差し伸べられたと言える。第二次補正予算により、実質無利子・無担保・据え置きで最大4千万円の融資が受けられるようになったうえ、申請手続きや審査もオンラインで済ませることができ“予想以上にあっさり融資が出た”との声も聞く。私の知るGS経営者も“大きな声では言えんけど、コロナ様さまだわ”と言っていた。
GS業界では、緊急事態宣言が発令された4~5月中、販売量が大きく減少したものの、それまで100円ぐらいだったガソリンの仕入価格が90円を切り、70円台目前まで下がったうえ、この業界には珍しく値下げ競争に陥らなかったことで、20円を越えるマージンを取ることもできた。最近、“緩み”が出始めてはいるものの、コロナ前と比べれば、全国的にまずまずの市況を維持している。“このまま行くと大幅減収だけど、過去最高益が出るかも”とほくそ笑むGS経営者も。
しかし、『サービス業を中心に消費は低調で、企業業績の急回復は難しい。大手銀行関係者は「業績が上向かないと、融資判断の基準の“格付け”は下がる。秋以降は融資が難しいケースが増える」と話す。全国中小企業団体中央会の森洋会長は「中小企業は資金繰り支援で何とか耐えている状態で、倒産や廃業の“予備軍”は多い。取引関係のある企業が相次いで倒れる連鎖倒産の可能性もある」と警戒する』─9月14日付「朝日新聞」。
“コロナのおかげ”なんて不謹慎なことを言っていられるのもいまのうちで、この先、恐慌に見舞われるかもしれないと覚悟しておいたほうがいいかも。今年もあと2ヶ月余りとなったが、このまま行くと、年末年始に見込んでいた企業収益は相当な規模で落ち込むだろう。すでに、全日空は約1万5千人の従業員の給与を年収の約3割近く減額し、冬のボーナスもゼロにすると労組に提案し、衝撃が走っている。今後、同様の措置に踏み切る企業が続出すると見られており、消費者マインドが冷え込むことは確実だ。
いくら国が「旅行に行こう! レストランに行こう! ショッピングに行こう!」と需要喚起を促しても、この先収入が減る、下手したら収入が途絶えてしまうかも、という不安が高まれば、「鳥貴族」に来店予約し、327円の「鳥釜めし」だけを注文してポイントを荒稼ぎするような輩も出てくると言うものだ。とにかく、生活防衛のために手段を選ばないこうした人々のことを、私たちは「お客様」と呼んでいる…。
ところで、GS業界は、ぼちぼち灯油の販売が始まったが、いわゆる“巣ごもり需要”で、例年よりも販売量が伸びるのではと予測されている。今年は、赤道付近の海面水温の低い状態が続くラニーニャ現象のせいで、日本の冬は寒くなりそうだとも言われており、コロナとラニーニャで灯油市場は活況を呈するかもしれない…なんて、相変わらず他力本願、しかも疫病と異常気象の御利益にあずかろうなんて、ええかげんにせぇ!と批難を浴びそうだ。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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