『備えあれば憂いなし』─言い換えれば、ちゃんと備えができていなければ安心しておちおち眠ることもできないよ、ということ。例えば、『原子力規制委員会は16日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所で、テロ対策などのために設置された監視装置が長期間にわたり故障していたことを明らかにした。外部からの侵入を許す恐れがあり、規制委は「極めて深刻だ」として4段階ある安全上の重要度のうち最も重い評価を初めて下した』─3月16日付「日本経済新聞」。
“エネルギー業界”という大きなくくりで言えば、セルフスタンドは監視カメラや泡消火設備、緊急停止装置などの安全装置の設置を義務付けられ、何百万円ものコスト負担をしているが、放射能という究極の危険物を扱う原発のセキュリティがざる同然だったとは…。東日本大震災によって“想定外”というものが、どれほどの災禍をもたらすか嫌と言うほど味わったはずなのに、全然「備え」ができていなかったなんて、ホント東電って会社はどうなってるんだ?!
『みずほ銀行で再びシステム障害が起きた。2002年の発足時、11年の東日本大震災直後に続き、3度目となる。今回はわずか2週間で4件も発生し、利用者らの不信感が高まっている。1回目のトラブルは2月28日に起きた。定期預金のデータを移行する作業が引き金となり、大規模なATMの障害が発生した。3月3日と7日にはATMやネットバンキングの障害が起きた。4回目は11~12日で、外国為替をつかさどる機器が故障し、企業の外貨建て送金に遅れが出た』─3月17日付「日本経済新聞」。
ビル・ゲイツは、「成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ」と語っているが、みずほの方々はあまり学習していなかったのね、と言わざるを得ない。過去2度の障害を踏まえ、4500億円の巨費を投じて新システムを導入したにもかかわらず、なぜまた事故が起きてしまったのか。目下原因を究明中とのことだが、技術的な問題だけでなく、銀行業界の根底にある“格差”も要因ではないかとの指摘もある。
みずほに限らず銀行業界では、システム畑出身の経営者はほとんどおらず、企画や営業、国際など「稼ぐ部門」が重んじられており、相対的にシステム部門の地位は低く、人員削減の対象にもなりやすいという。一方、システム部門はといえば“どうせ素人にはわからない”と言わんばかりの独善的な振る舞いが、他部門との意思の疎通を阻んでいるのだとか。銀行に限らず、数多あるシステム開発の現場でありそうな話ではある。コンピューターがどんなに発達しようとも、仕事の中心は人間だ。ならばそこには個性や感情が存在するわけで、それがうまく融和し、協働するかどうかがプロジェクトの成否を決するといえる。
システム関係の残念な話をもうひとつ。『LINEがシステム開発を委託している中国の関連会社で、国内利用者の個人情報に現地の技術者がアクセスできる状態になっていたことが17日、分かった。個人情報保護委LINEに原因について追加の報告を求め、改善を促す方針だ』─3月17日付「日本経済新聞」。
かねてから、LINEについては、「韓国や中国のサーバーにデータが送られており、個人情報が盗まれる恐れがある」という噂が絶えなかったが、ホントだったわけで、政府系機関や地方自治体はアカウントを続々に停止している。国内で約8600万人が利用する情報インフラのデータが隣国に流出していたというのは結構やばい。デジタル改革を看板政策に掲げていた現政権にとっても大打撃だろう。やはりこれも、「備え」がしっかりできていなかったと断じざるを得ない。それにしても『タダほど怖いものはない』ですな。
教訓は、システムの開発・運用は十分な準備と検証が必要だということ。ところで、エネオスが東燃ゼネラルと合併してから開発してきた「CoMPASS」という基幹システムの4月からの稼動が見送られたとのこと。3度目の延期らしい。しかし『急いては事を仕損じる』。開発スタッフの方々は、どうか焦らず、現場との意思疎通をよく図りながら、万全なシステムをリリースしていただきたいものだ。余計なお世話でしょうけど…。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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