『経済産業省の調査によると、2020年度(20年4月~21年3月)のガソリン販売量は4523万キロリットル(3月分は速報値)。19年度に比べて8%減り、30年ぶりの低水準となった。給油所の採算も悪化している。資源エネルギー庁が発表するガソリン店頭価格と卸値から給油所の粗利を示す「販売マージン」を計算すると、4月時点(推計値)で1リットル18.1円。昨年4月(26.7円)と比べると3割強減り、平年並みの水準に下がりつつある。原油価格の急上昇でガソリンの仕入れ値は上がったが、需要低迷もあって店頭価格に転嫁しきれていない』─5月15日付「日本経済新聞」。
確かに、今年のGWもパッとしなかった。ウチのような零細店はともかく、大中規模ディーラーさんは昨年に続き厳しかったのではないか。コロナ禍により感染リスクのある公共交通機関から自家用車に移動手段を切り替える人が増えて、ガソリン需要は増えるのではないかという期待の声もあったが、そんなに甘くはなかったということ。だが、それ以上に販売マージンが大幅減となったことの方がこたえているに違いない。
去年の今ごろは、怖い夢(減販)と心地よい夢(20円)を同時に見ていた感じだったが、今年はそうはいかず、マージンも激減。それでも「平年並みの水準」なんて日経記事で見透かされちゃっているのが切ない。本当は常に20円ぐらいないとほとんどのGSはやってゆけないんだけど。というわけで、17日に始まる週から市況是正が行われるようだが果たして…。
気になった日経記事(4月26日付)をもうひとつ。『地図大手のゼンリンが公共の電気自動車の充電設備の設置数を集計したところ、 21年3月末の設置数は2万9214基と1年前から1000基減った。記録のある12年度以降、7年連続で前年度を上回っていたが、初めて減少に転じた。商業施設や宿泊施設に設置されていた充電器の撤去が目立つ。利用者の少なさから設置する利点が薄れ、耐用年数を超えた設備を更新しない事例が多い。コロナ禍で経営が悪化した宿泊施設が設置をやめるケースもある』─。
充電インフラはEVの利便性を左右する。ガス欠ならぬ「電欠」になりかけても駆け込む先が無いようでは、安心してEVに乗ろうとは思わないだろう。20年の国内のEV販売は1万5千台と乗用車の新車市場で0.3㌫足らず。「鶏と卵」的な問題ではあるが、やはりインフラ拡充が先ではないか。ところが早くも頭打ち。そのうえ、現存する充電器のうち約2万基は13~16年度に約490億円の税金を集中投資して設置されたものだが、今年から一斉に更新期に入る。一例として、鳥取県米子市は観光センターの急速充電器1台を撤去した。導入費約370万円は国からの補助金で実質タダだったものの、19年に故障し、150万円近い見積もりで修理を断念した。コロナ不況でこうした自治体や事業者が増えると見られている。
先日、ホンダが2040年以降に世界で販売する新車をすべてをEV・FCVにすると発表し、EV化が加速しているかのように見えるが、本当に計画通り事が運ぶのかいまだ懐疑的な意見も少なくない。例えば、個別の製品の製造・輸送・販売・使用・廃棄・再利用までの各段階の環境負荷を評価するライフサイクルアセスメントによると、EVはガソリン車の2倍を越えるCO2を排出するという試算もある。また、カーボンニュートラルを実現する方法はEV化だけではなく、「e-Fuel」と呼ばれるジメチルエーテルなどの合成液体燃料やバイオ燃料などの量産によって、エンジン車でも十分脱炭素に貢献できると主張する識者もいる。
ある経営コンサルタントは、「エンジンは中国が造れない数少ない製品。エンジンを造るために要する高度な金型技術と成形技術が中国にはない。日本は強みであるエンジンの技術を生かしてカーボンニュートラル達成の選択肢を残すべきだ」と主張している。ここまでくると、亡国論に近い気もするが、ともかく日本における脱炭素に向けた動きは、まだレヂ袋を有料化した程度で、この先どんな展開をしてゆくのか見当がつかない。まあ一連のコロナ対策を見ていてもわかることだが、明確なヴィジョンを示さずに付け焼刃的な対応で凌ぐというのがこの国の“お家芸”のようなので、仕方ないっちゃ仕方ないのだが。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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