『埼玉県を地盤とする中古ゴルフ用品販売のゴルフ・ドゥは、ガソリンスタンドの跡地活用を提案するコモンチェーン(大阪府吹田市)と業務提携して、カフェや室内で楽しめるシミュレーションゴルフを備えた新業態の店舗「ゴルフ・ドゥPlus(仮称)」を今後5年間で10店舗出店する。ガソリンスタンドの事業撤退が相次ぐなか、その跡地を活用してオーナーにフランチャイズ加盟を提案する。従来の標準店舗の150坪より広い250~400坪の売り場を想定。屋台骨が強靱な給油所の屋根部分を生かして、店舗を設計する見込み』─5月31日付「日本経済新聞」。
4月に松山英樹がマスターズで優勝し、今月6日には笹生優花が全米女子オープンを制してゴルフ関連業種はいま「大活況」なんだとか。例によって、松山選手や笹生選手が使っていたゴルフ道具の注文が殺到しているらしい。同じ道具を使えば、ゴルフが上達するというものではないが、ゴルフ仲間に“これ、松山と同じドライバーなんだぜ”と自慢したいのだろう。ちなみに一昨年、渋野日向子が全英オープンで優勝した際、プレーの合間に食べていたお菓子「タラタラしてんじゃねーよ」も、製造元が嬉しい悲鳴を上げる事態になったとか…。
1991年の約1800万人をピークにゴルフ人口は減少の一途をたどっていたが、松山のマスターズ制覇で一気に風向きが変わった。折りしも、コロナ禍で三密を回避しながら運動不足を解消できるレジャーとしてゴルフへの関心が高まった矢先の快挙だったため、ゴルフを始める若者が急増しているとのこと。冒頭で紹介した「ゴルフドゥ」も、30歳未満の新規会員数が増加中で、突然訪れたこのブームの恩恵を刈り取るべく新業態展開となったのだろう。右肩上がりの会社が目をつけたのが、建造物は「強靭」だが中身は年々弱体化しているGS業界というのが何とも切ない。
確かにGSはマイカー客をターゲットにした店舗への転換が比較的簡単なので、ラーメン店、携帯ショップ、理容室、パン屋、コインランドリーなど、いろいろな業種が居抜き物件として狙っていることだろう。キャノピーは頑丈であるだけでなく、視認性に優れ、荒天にも強い。むざむざ壊してしまわずとも活用できればコストも大幅に圧縮できる。GSはいまだロードサイド店舗として魅力的な立地と機能を備えているのだ。GS経営者はいま一度自分たちの店舗の価値を見直してみてはどうだろうか。
閑話休題。ゴルフブームの起爆剤となった日本人初のマスターズ優勝って、そんなに凄い出来事なの?とゴルフにほとんど興味の無い私が、ゴルフ好きの友人に問うたところ、知人は半ば呆れ顔で「とてつもない偉業」なのだと語った。過去85年間に132人の日本人選手が挑んでも成し遂げられなかったことを松山はやってのけたのだ、と。そして彼は、オーガスタの勝者となることがいかに難しいことか、10度目の挑戦でグリーンジャケットに袖を通した松山がどれほど進化を遂げてきたかなどを熱く解説してくれた。
ところで、松山英樹は優勝後の記者会見でこう語っている。「これからゴルフを始めたり、10代とか高校生に影響があると思う。初めてのメジャーチャンピオンになったことで、今までだったら日本人にはできないんじゃないかというのがあったと思うが、そこを覆すことができた。やっと日本人でもできることがわかったと思います。もっといい影響を与えられるように、僕はまだまだ頑張っていけたらと思います」。
確かに泣かせるコメントだが、一方で「日本人が」みたいなことがちょっとダサいなとも思う。例えば、笹生優花は父が日本人、母はフィリピン人で両方の国籍を持っている。東京五輪ではフィリピン代表で出場するそうだが、だからどうしたというのだ。どこの国のアスリートだっていいじゃないか。“同国人だから応援する”という狭い了見でスポーツを観戦するのはナンセンスだと思う。私はいま大谷翔平に夢中だが、それは彼が日本人だからではなく、そのパフォーマンスがあまりにもアンビリーバブルだからにほかならない。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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