vol.861『コロナ疲れであの人は…』

『コロナウイルス第5波では20歳未満の感染が急増している。感染増加が顕著となってきた7月28日と4週間後の8月25日の累計感染者数を比べると、全体では51%増だったのに対し、20歳未満は約8割増えていた。子どもはコロナに感染しにくいとされてきたが、感染力の強い変異株「デルタ」に置き換わったことが影響しているとみられる』─9月1日付「朝日新聞」。

8月末現在、国内での20歳未満の死亡例はゼロとのことだが、2学期が始まり、各学校では感染予防に神経を尖らせている。そのピリピリとした“空気”は、すでに子どもたちの心身、とりわけ“こころ”の健康を蝕んでいるようだ。厚生労働省の月次報告(暫定値)によると、今年7月までに自殺した子どもは272人(小学生7人、中学生75人、高校生190人)で、過去最高となった去年の同じ時期の241人を上回っている。

無論、すべての事由が、コロナ禍に起因するものではないと思うが、長引く自粛生活に加えて、若年層の感染増加が、子どもたちの健康に悪影響を及ぼしていることは間違いない。何とも痛ましい。一方で、20歳未満はおろか20代へのワクチン接種もいまだ進んでおらず、若者やその親たちの苛立ちが高まっていた最中、日本の最高指揮官が交替することになった。まあ、内閣支持率が3割を切っていたから、然もありなんという話だが、菅首相は日本で一番ひどい「コロナ疲れ」に陥っている人かもしれない。

「コロナ疲れ」に陥る人の特徴のひとつに『孤独』がある。内閣総理大臣はまさに日本一孤独な人といわれる。とりわけ、コロナ対策の失敗が続き、補選、都議選、そしてお膝元での首長選にも惨敗するに及んで、支持者たちもどんどん離れていったんじゃないだろうか。結局、切り札である「解散」と「人事」も、四面楚歌で使えないまま“詰み”となってしまった。この間、菅首相は5ヶ月余り、一度も休養日を設けず執務に当たっていたそうだが、それもこみ上げてくる孤独を振り払おうとするためだったのではないだろうか。

「コロナ疲れ」になる別の特徴は『情報過多』。不安をまぎらわせようと、毎日テレビを何時間も見たり、スマホでコロナ関連のニュースを読みあさっている人は少なくない。もちろん、「正しい情報」は不安を取り除くのに役立つが、ネガティブな情報ばかり集め続けると、メンタルは疲弊していく。おそらくこの一年間、菅首相はずっと、大量のネガティブな情報を聞かされてきたことだろう。

いくらまわりがお追従を言っても、メディアはワクチン接種の遅れや医療機関の危機などを連日報じる。いつの時代も総理大臣は批判の的だが、コロナ禍においては何十倍、何百倍もの批判が浴びせられたことだろう。“ワクチン接種さえ始まれば”“オリンピックさえ始まれば”という楽観的な見通しは次々に打ち砕かれ、やることなすこと酷評されたら、だれだって心が折れてしまうだろう。

先月25日に、「緊急事態宣言」を21都道府県まで拡大することを発表した際、「明かりははっきりと見えはじめている」と語った首相の目はうつろだった。そう見えただけかもしれないが、私はあの会見を見ていて“ああ、この人だいぶ参ってるな”と感じた。それでも、ついこの間まで続投に意欲を示していたのは、自らの政策をやり遂げようとする使命感ゆえか、はたまた権力の座への執着心からなのか─。

 

いずれにせよ、この先誰が首相になるかなんて、一介のGS経営者にとってはあまり関係のない話。というか、誰がなっても状況が劇的によくなることはないだろう。むしろ、いまよりもっと悪くなるかもしれない。いま一番危ぶまれるのは、冒頭の記事にあったとおり、子どもたちにコロナが毒牙を剥きはじめたことだ。大人は“疲れた”なんて言っている場合じゃない。子どもたち、若者たちのために、いまやるべきことをやり、やるべきでないことはやめると改めて決意すべきだ。“総理大臣が悪い”なんて言ってたってはじまらないのだ。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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