vol.659『何とかする気があるのか』

きのう(5月28日)の夜7時のNHKニュースで『約3割 事業継続不透明 過疎地のガソリンスタンド』。経産省が、GS3ヶ所以下の「給油所過疎地」の自治体にある1、436店を対象にアンケートを行なったところ、7割超の1、041店から回答を得た。それによると、事業を続ける見通しが立っていないところが3割近くに上った。販売量の減少や従業員の確保の難しさ、施設の老朽化などが主な理由で、人口の減少に伴って経営が厳しいGSはさらに増えるだろう、と。また、こうした「給油所過疎地」では、災害時の燃料供給に支障が出るおそれがあるため、経産省は、自治体がGSを運営したり、店舗の統廃合を進めたりするなどの対策を支援する方針だ、とも。

毎日、世界中で危機的な出来事が頻発しているというのに、日曜夜7時の全国ニュースで報じるようなことなのかと首をかしげた。それに、報道内容自体“いまごろ何を言っているんだろう。もう何年も前から警鐘が鳴らされているでしょ?”と失笑するしかないようなものであった。「自治体がGSを運営」って言ったって、地方自治体は押し並べて財政難で苦しんでいる。赤字が目に見えている事業を運営するゆとりはない。仮に自治体が運営しても“お役所仕事”よろしく赤字がもっとかさむだけだろう。「店舗の統廃合」ってどういうこと? もう3ヶ所以下にまで減っているのに、いまさら統廃合したところでどんだけの効果があると思っているんだろう?

経産省は石油元売、とりわけJXTGに対して、「給油所過疎地」において100㌫子会がGS運営をするよう要請してはどうだろうか。JXTGの「企業理念」は、『お客様や社会からの期待・変化する時代の要請に真摯に向き合い、商品・サービスの安定的な供給に努める』とある。是非とも、単なる理念に終わらせず、実践してほしいと思う。また、政府が目指す、規制緩和策の一環として、「給油所過疎地」を特区とし、無人セルフやガソリンの配達などを認めるようにしてはどうだろうか。

どのみち、GS単体での営業は厳しいし、とりわけ中山間地におけるGSは、ワンストップ・サービスとすることが不可欠だろう。折りしも、5月24日付「ウォール・ストリート・ジャーナル」では、大手石油会社がこぞって傘下GSを“非GS化”するプログラムを打ち出していると報じている。記事では、BPの欧州リテール部門の幹部の、「15年前は燃料だけだったが、いまでは、英国でBPのスタンドを訪れる消費者の半分は給油せず、食品だけを買って帰る」というコメントと共に、欧州における幾つかの施策について紹介している。

例えば、ハンガリーの石油会社MOLグループは、自動運転車とカーシェアリングの普及をGSに取り込む方法を模索している。同社が思い描く10~15年後の未来では、顧客が仕事中にあらかじめ夕食に何を食べるか決めておくと、必要な食品を積み終えたMOLの自動運転車が職場まで迎えに来てくれる、という社会だ。シェルはオランダで間もなく、自社開発したアプリを通じた燃料配達サービスを試験的に開始する。ユーザーが買い物中や食事中、または就寝中でも、シェルが車の給油に来てくれるというサービスで、コーヒーのデリバリーも追加することが検討されているのだとか。シェルのリテール部門のトップは、「われわれは自分たちを破壊しようとしている。しかし、消費者にとって良いことは何であれ、われわれにも良いはずだ」と語っている─。

いつまでも“厳しい…何とかしなくては”と言っているだけで、相変わらずの価格競争に明け暮れ、“岩盤規制”には、ドリルどころか引っ掻き傷すら付けられずにいる日本の石油業界は、世界の中で、何周回も遅れを取っているように思える。役所や石油会社が手をこまぬいているうちに、国内では毎週2ヶ所ずつGSが消滅しているというのに─。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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