vol.713『南海トラフ地震』

大阪府北部を震源とする震度6弱の地震が発生してから一週間が過ぎた。報道によれば、都市ガスもほぼ復旧が完了したとのこと。市民生活は平常を取戻しつつあるようだが、何せ大都市で発生した地震のため、今後構造物や道路などに二次災害が生じる危険性が内包されており、予断を許さない状況だとのことだ。被災地の方々の不安は察するに余りある。

高槻市では、小学4年生の女の子が、学校のブロック塀が倒壊し、下敷きになって亡くなるという悼ましい事故が起きた。報道によれば、3年前に専門家から危険性を指摘されていたものの、目視による点検がなされただけだったとのことで、行政の怠慢が指摘されている。

GSは一般には堅牢な建物だとして、地震のときは緊急避難所になるとされているが、実際には地震が来てみないことにはわからない。確かに1995年の阪神大震災のときは、被災地で倒壊したGSは1ヶ所もなかったが、あまり過信しないほうがよい。今回のような大きな揺れでなくても、東海地方でも年に何度も震度1とか2程度の地震が発生している。そうした揺れがボディブローのように効いて、コンクリートに脆弱性が蓄積されてゆくと警鐘を鳴らす専門家もいる。

じゃあ、どうすりゃいいんだということになるが、結局起きるかどうかもわからないものにコストをかける余裕はなく、運頼みというのが実情。揺れの種類、大きさ、長さなど複合的な要因すべてに対して前もって備えることなど不可能なのだ。だが、もっと大きな不安がわたしたちの前途に横たわっている。

今回の地震は、あの「南海トラフ地震」の前兆ではないかという、いやーな予感をかなりの人が感じているのではないだろうか。最大震度マグニチュード9、死者33万人、被害総額1400兆円という、想像を絶する被害をもたらすと予測されている大災害。政府や研究機関は「30年以内に80㌫」というあいまいな確率を示しているが、これって、ほぼ確実に起きるということではないのか。

とにかく、そんな物凄い地震と津波が押し寄せてきたら、耐震補強も、防災マニュアルもほとんど役に立たないだろう。もうGSに逃げ込もうが、何をしようが無駄で、覚悟するしかなさそうだ。特に震源に近い名古屋や静岡などの都市は阪神大震災と東日本大震災の両方に襲われたような状況になると予測されている。想像もつかない。というか想像しても仕方ない。天気予報で「きょうの降水確率は80㌫」と知らされれば、だれもが傘を持ってゆくが、巨大地震の確率が80㌫と言われてもピンと来ないのだ。

そもそも、海底の断層がどうなっているかなんて正確に知ることなど不可能だし、“国土強靭化“なんていっても、学校のコンクリート塀すら補強できない有様なので、お上もあまり当てにならない。せいぜい自衛手段として、カセットコンロや懐中電灯、電池式充電器、飲料水や缶詰を買い置きしておくぐらいしかできることはない。

もし、GSが地震や津波の災禍をくぐり抜けたとしても、その後のパニック状態に首尾よく対処できるかどうか。災害時の住民拠点としての役割を果たすべく、石油協会は全国約1、400ヶ所の給油所に自家発電機を配備すべく補助金を交付しているとのことだが、震災経験のあるGS経営者は、「自家発電機を使ってまで営業したくない。お店を閉めたほうがいい」と言っておられた。さもありなん。災害時の日本人のモラルの高さは折紙付きとはいえ、未曾有の大患難ともなれば、SNSによるデマの拡散なども手伝って、どんな騒乱が起きるかもわからない。石油業界は、今後も、災害時に備えて普段から満タンにしておくよう粘り強くドライバーを啓蒙してゆくべきだ。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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